「いらっしゃいませ!・・・えっ!?」
道具屋の店主が戸惑いの声をあげた。
道具屋の中にはローブなどの一部の装備品も商品として扱っている。
「これ竜ちゃんに似合いそうだよ」
商品のローブを手にして言ったのは-----ロトの称号を受けた勇者の子孫、ツバサであった。
「たまには普段とは違う服装にするのも、いいかもしれないな」
うれしそうに言う、竜ちゃんと呼ばれた者が言った。
「り・・・竜王じゃないか・・・。勇者も一緒にお買い物って、どういう事だ!?」
道具屋の店主は困惑した。
「なに驚いてるんだよ」
「そうだよ、俺たち一緒に買い物してるだけだよ」
仲良くそう話す竜王と勇者。
「そんな・・・勇者が、倒すはずの竜王と仲良くするなんて・・・」
戸惑う店主を脇目に、竜王と勇者は買い物を続けた。
「俺たち、親友だもんな」
「そうそう。マブダチだぜ」
そんな事を言いながら、買い物をするツバサと竜王。
この2人が仲良くなったきっかけは、初対面の戦いのときであった。
時は数日前に戻る。
場所は竜王の城の奥の王室。
玉座に竜王が座っていた。
そこへ、竜王を打破するために、勇者ツバサがやってきた。
「よくぞ来た、私が王の中の王、竜王だ。
私は、お前のような若者が来るのを待っていたぞ」
「そうか。待ってくれてて嬉しいよ」
ツバサは皮肉を込めて言った。
「そうか、待っていた甲斐があったな、ツバサよ」
同様に竜王も、そんな言葉で返した。
竜王がツバサとは初対面なのに名前を知ってるのは、
勇者がこちらに来ているという情報と一緒に名前も聞いていたからだった。
「お前が私の味方になれば、世界の半分をやるぞ。
世界の半分だぞ。悪くない話だろ?」
ツバサにそう持ち掛ける竜王だが、ツバサの答えは「断る!」だった。
「そうか・・・それなら、断ったのを後悔させてやろう・・・」
竜王は、玉座から立ち上がり、手にしている杖を構え、両手を広げた。
この場所で、死闘が始まった。
どちらが勝つかは、わからない。
やがて竜王は、ローブを着た人型の姿をやめ、本当の姿の大きな翼竜へと姿を変えた。
再び、戦い開始となったのだが、思わぬ展開が待っていようとは、2人共思っていなかった。
-----勇者の子孫とはいえ所詮は人間だと思ってたけど・・・こいつ強い!
-----精霊の守りや先祖の武器防具を携えてでも、竜王は、かなりの強敵だぞ!
お互い、相手の強さを認めていた。
そして-----
「ツバサよ!お前、なかなかやるじゃないか!」
「竜王!おぬしも、なかなか強いぞ!」
この言葉により、お互いの強さを認め、友情が生まれたのだった。
ツバサは剣を鞘に仕舞い、竜王は翼竜の姿から人型のローブ姿に戻った。
竜王が握り拳を緩やかに突き出した。
ツバサも握り拳を緩やかに突き出す。
その2つの拳は、やがてくっ付いていく。『グータッチ』だ。
そして2人は、肩を抱き合い、こう言った。
「俺たち、今からマブダチだ!」
戦いにより、お互いの強さを認めて、2人は親友となった。
そして今-----
竜王とツバサは、2人で出かけるようになった。
今日の道具屋での買い物も、その一環である。
2人が仲良くお出かけしている光景を見ると、
まるでツバサが竜王側に着いたように見えるが、実はそうでもなかった。
ツバサは世界の半分をもらっていない。
そして竜王側も-----
「ツバサが住む世界を、闇で包むのをやめるぞ!」と、アレフガルドを包んでいる闇を、取り除いたのだ。
但しモンスターの徘徊は、これまで通りだった。
あくまでお互いの住む世界に、手を出すのをやめた、という事である。
竜王とツバサが仲良くお出かけしている姿を見た町の者たちは、
「アレフガルドの闇が取り除かれたんだから、あれでいいのかもしれないな。
モンスターの徘徊はこれまで通りだけど、町で武器防具を売ってるし呪文の教室もあるのだから、
予想通りではないものの、これでいいのかもしれないな・・・」
と、一応は納得している様子であった。
<おわり>
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