いよいよ、スマブラバトルイベント開催日の前日、つまり選手お披露目会の日がやってきた。
場所は大きなバトルステージだ。
但し今日は、あくまでお披露目会だけなので、バトルは一切しない。
そして今、バトルステージには最初から出る選手+Miiファイターの3人がいる。
隠れ選手は来ないのだ。 同一人物を除いては。
同一人物というのは、例を挙げるとマリオとDr.マリオやピットとブラックピット、シークとゼルダなどだ。
観客席は満員で、既に熱気であふれている。
簡単にスマブラバトルイベントに関する紹介と説明のあと、出場選手の紹介となった。
出場選手の紹介は、まずは最初は何度もバトルイベントに出場しているレギュラー選手、次に今回初めて出場する選手、そしてMiiファイターの順番だ。
----ああ、いよいよ次だな・・・
今回初めて出場する選手の紹介が終わり、次がMiiファイターの紹介となった。
「えー今回、一般参加があります。 高い競争率に打ち勝ち、見事スマブラの選手となった、Miiファイターの3人です。
まずは剣士のデレックです」
デレックが、深々とおじぎをした。
「次に、ガンナーのシュリです」
同様に、シュリが深々とおじぎをする。
「3人目は、格闘のタツヤです」
同じく、タツヤが深々とおじぎをした、その時-----
「おい待て!」と観客席から声がした。
何だ何だ!?
観客席はもちろん、出場選手もザワザワし始めた。
しかしそれを気に留めず、声の主はバトルステージに向かって行った。
やがてその者は、バトルステージに上がっていった。
それは男性Miiだった。 彼はタツヤの所まで走って行き、突然胸倉を掴み始めた。
「おい! 何するんだ!」
デレックが引き離そうとするが、強い力で振り落とされてしまった。
「みなさん聞いてください! こいつは、不正して勝ちぬけた奴なんです!」
乱入者は、そう言ったのだった。
「おい・・・待て・・・。 お前は・・・反則して負けたんだ・・・っ・・・!」
タツヤは反論したが、胸倉を掴まれているため、途切れ途切れでしか喋られない。
「反則だと!? 確かに俺は、選考戦でお前を倒したんだぞ! にもかかわらず、負け扱いになって敗退したんだ!」
「まさか・・・どうして・・・反則に・・・なったか・・・わかってないのか・・・?」
「どうせここの係員とグルになって、俺を反則扱いにするように仕向けたんじゃないか?
いや、それ以外にも相手を反則扱いにして負けにしたんじゃないの? それによって選手になれたんだろ!」
----突然、大きな声がした。
『失礼な奴だ!』
マスターハンドの声だった。
『自分の負けを認めないどころか、係員がグルになってると言い出すとは、なんと身勝手な!』
「黙れ!」
乱入者は、胸倉を掴んでいる手の力を強めた。
「や・・・やめろ・・・。 苦しい・・・」
タツヤの顔色が赤くなってきている。
タツヤが反撃しないのは意味があった。 バトルステージでは必要外な戦いは禁止しているからだ。
また、乱入者に攻撃してはいけないという決まりもある。
『タツヤ反撃しろ! 私が許可する!』
マスターハンドの声がした。
その声を聞き、タツヤはすぐに乱入者の腕を掴み、自分の胸部から引き離した。 そしてそのまま、身体の向きを逆にさせた。
それにより体勢逆転となった。
「いてててて!」
今はタツヤが乱入者を押さえつけてる状態になっている。
「本当に反則負けしたのをわかってないのか?」
「俺はお前を確かに倒したんだぞ!」
「仮にお前が勝ち進んで選手になったとしたら・・・救急車で運ばれる選手が出てくるぞ!」
「あのさ・・・」
横にいるデレックが言った。
「救急車で運ばれる選手が出てくるって、どんな反則をしたんだ?」
そう聞かれ、タツヤは少し赤くなって下を向いた。 そしてボソボソと小さな声で言い始める。
「・・・どうしたんだ?」
デレックはタツヤに耳を近づけた。 彼は驚いた顔をした直後、大きな声でこう言った。
「金的だって」
観客が騒ぎ出した。
そりゃそうだろう。 一般的に格闘では金的は禁止されている。
乱入者は、それをわからずに抗議しているのだから、騒ぐなというのが無理というものだ。
やがてバトルステージに、大柄なスタッフが3人現れた。 彼らは乱入者の身体を捕まえ、強制退場させた。
「驚いたな・・・。 あいつ、選考戦で倒れたオレを見て、勝った気分でいたものの、係員に反則負けですと言われても、なかなか引き下がらなかったんだよ。
それどころか、まさかここまでするほど反則を認めてなかったとはな・・・」
タツヤは驚きを隠せなかった。
さて、乱入者がいたハプニング(?)を除いては、無事に選手お披露目会は終了となった。
バトル会場を出ようとしたタツヤに、係員の1人が声をかけた。
「事務所に来てくださいという連絡がありました。 昨日の件と言えばわかる、との事です」
タツヤは「わかりました」と言って、事務所の方に向かった。
昨日の件って何だろう・・・
少々不安になりながらもタツヤは事務所に入って行った。
しかし、事務員から話を聞いた彼は、驚きを隠せなかった。
というのも、昨日タツヤを襲おうとした者達は、さきほどの乱入者が送った事によるものだった、という話を聞いたからだ。
しかも人数は、少なく見積もっても12人程だったのだが、実は20人以上だったという事を聞き、彼は青くなった。
「よく無事だったわねえ・・・」
「はあ・・・」
タツヤは言葉が出なかった。
「それだけ判断がよかったって事よ。 地響きで応対したのがね」
「クレームが来たって聞いた時は、どうしようかと思いましたけど」
「クレーム言ってきたのもグルだったのよ」
「はあ・・・」
「それにしても、逆恨みって怖いわよねえ・・・」
「ただいま・・・」
「おー、おかえり」
廊下にいたデレックが言った。
「なんか疲れてるみたいね。 まあ、あんな事があったら疲れるわよねえ」
同じく廊下にいたシュリが言った。
「今から寝る・・・」
「食事どうするの?」
「たぶん起きたら食べると思う・・・」
タツヤは少しヨレヨレな感じだった。
「うん。 確かに寝た方がいいかもしれないけど、大丈夫かしら・・・」
心配そうに見ているシュリに、
「寝た方がいい。 睡眠は一番の疲労回復だからな。 その方が身体だけじゃなく、頭の中も整理できるだろうし」
と、マリオが言った。彼は医者でもあるのだ。
----夜もふけてきました。
選手寮にいる選手も、一部の夜型の者を除いて、よく眠っています。
戦いの火蓋を切るその時まで、ゆっくりとおやすみなさい。
明日は、いよいよバトルイベント開催です。
<おわり>
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