コツ、コツ、コツ、コツ・・・

クリスの足音が、辺りに響いた。

「普通に歩いてもいいじゃん、なんで制限するのよ」

彼女はつぶやいた。



話は数日前に戻る。

クリスはウーフーアイランドに旅行に来た。

もちろん目的は、スカイスポーツである。

スカイスポーツをする観光客には、必ず現地の係員による説明を受けなければならなかった。

そして、現地の係員によるスカイスポーツの説明が一通り終わった時だった。

「この島には、いくつかの洞窟がありますが、いずれの洞窟も、必ず乗り物に乗るかロケットベルトで飛ぶかの状態で、入っていってください。

 決して、徒歩や乗り物等を使わない状態で入らないで下さい。 いいですね、必ず守ってください!」

と、念を押して係員は言っていた。


「制限する事ないじゃん。 涼しくていい気持ちだし」

光を受けない洞窟は、外の南国の太陽の光や熱を全く受けない上に、風が良く通るので涼しいのだ。

しかしクリスは知らなかった。

現地係員が、くどいほど歩いて入らないでといった理由を-----


洞窟の中には、湖や川がある。

水中にも、もちろん生物が住んでいる。

ロケットベルト装着や乗り物に乗っている状態の場合、洞窟内の水中に落ちてしまっても、すぐに水面上に上がれるのだが、

生身で落ちてしまった場合、すぐに水面上に上がれるのは、ほぼ不可能である。

足を滑らせてしまわなければ、洞窟内の水中に落ちることもない、と思われがちだが・・・


ぐわっ!

そんな音を立てて、大きな魚が顔を出した。

しかもその顔の距離は、クリスの体の、目と鼻の先であった。

「きゃああ!」

彼女は慌ててよけようとするも、その魚の方が素早かった。

抵抗したものの、かなりの無理があった。

相手は野生生物である。 ましてや抵抗している側は女性の腕力である。

「いやああああーーっ!!」


クリス本人も想像がつかなかっただろう。

まさかリゾート地の大きな魚に喰われるとは。

しかも洞窟の中で。


後日。

クリスが帰国する日が来た。

しかし、集合時間にクリスは来なかった。

時間通りに来なかった人を置いて、クリスが乗る予定だった帰国便は飛び立っていった。


さらに後日。

クリスが借りていた、レンタルのロケットベルトが洞窟前で発見された。

借主の名前が書かれているタグを見た者が、こうつぶやいた。

「だから言ったのに。 洞窟はロケットベルト装着か、乗り物に乗った状態で入って下さいって・・・」

仮にロケットベルトを装着したまま洞窟内の水中に転落して巨大魚に喰われたとしても、

ロケットベルト自体に巨大魚が嫌う味を吹き付けてあるので、巨大魚に喰われても直後に吐き出されてしまうのだ。


とはいえ、指示を無視したクリスには、自業自得の結果かもしれないが・・・


<おわり>



読んで頂き、ありがとうございます。

リアルで、リゾート地の観光客が、現地の危険性のある事の説明や注意を受け入れずに危険行為をする事も実際に多く、

そういった話を小説にしてみた、といった感じのものであります。

もちろん、実際のゲームには巨大魚は出てきません。


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