突然の事に、ミサキは避けきれず、子UFOの体当たりをまともに食らってしまった。
「きゃああっ!」
宙を舞ってしまうミサキ。しかしなんとか体勢を立て直し、ロケットベルトの操作により、何事もなかったかのごとく、空中で立ち上がりはじめた。
「もしかしたら・・・。私が、3台の子UFOを誘拐しようとしたように見えたとか?」
言葉が通じないので、推測は推測のままである。
再度話をしようと、ミサキは体当たりしてきた子UFOの方へ戻ろうとした。
手にしているロケットベルトの操縦レバーに力を入れる。
直後「痛っ・・・」と彼女はつぶやいた。今の体当たりでケガをしてしまったようだ。
左の二の腕から、ツーっと血が流れていた。
しかしそんな状態のミサキに構わずに、興奮中の子UFOは、なおもミサキに体当たりをしようとしていた。
「きゃっ!」
「☆□○*△!!」
「やだもう、話聞いてよ!・・・言葉通じないから無理?」
興奮している子UFOは、まったき聞く耳を持たない。それどころか、ミサキに体当たり攻撃し続けてる。
「もうっ・・・誰か来て!私1人じゃ無理!」
とはいえ、逃げるわけにもいかない。あくまで今の目的は、迷子の子UFO4台を見つけ、マザーシップに連れて行く事なのだから。
しかしこんな状況では、無線で他の隊員に応援を頼む余裕はない。
そんなところに----
ミサキの後ろで待機している3台の子UFOのうちの1台が、興奮中の子UFOの所へ向かって行った。
「あ!今向かって行ったら危ないわよ!」
ミサキが、その子UFOの後を追った。というのも。向かって行ったのは、ぼーっとしたタイプの子UFOだからだ。
「☆□◎*!!」
「○△◇*※・・・」
「∇□△☆!?」
「◇〇~*※~・・・」
「□◎☆・・・。・・・・。」
ボーっとしたタイプの子UFO側が、興奮中の子UFO側に、何やら話をしている。
やがて、興奮していた側の子UFOは、激しく動くのをやめた。
ボーっとしたタイプに説得されたのかもしれない。
但し、説得されたが納得はしていないようで、やや不満気味な様子なのが、ミサキにも伝わってきている。
「あのボーっとした感じのタイプって、実は『やり手』なのかしら」
ミサキがつぶやいた。
いや、実は、いわゆる『おっとりタイプ』が何よりも怖いタイプなのかもしれない。
やがて、さっきまで興奮していた側の子UFOも、他の3台と一緒に、ミサキに着いて来た。
ミサキは、ぼーっとしたタイプの子UFOに「ありがとう。助かったわ」と礼を言った。
「さあ、テンガ・ナマンガ火山の南東に向かうわよ!」
レッドゲートブリッジを離れ、テンガ・ナマンガ火山に近づいていくと、大きなUFOが停まっているのが見つかった。
「あれが、マザーシップね」
ミサキは、少しロケットベルトの速度を上げた。
「みんな!マザーシップの場所は、もうすぐよ!」
言葉は通じないのだが、4台の子UFOはわかったようで、喜んだ様子だった。
マザーシップの真下から、下に向けて光が放たれていた。
ミサキは、その光に向かって行く。
そして、その光を浴びるような位置に立つと、着いて来ていた子UFOは、一斉にマザーシップの中へと入っていった。
やがて4台の子UFO全員が入っていくと、マザーシップから声がした。
「○△◇ー○*※~!」
「何かな。お礼言ってるのかしら」
しばらくして、マザーシップはゆっくりと動き始めた。
ミサキは、手を振って、それを見送った----
「迷子の送迎完了!」
ミサキは軽くガッツポーズした。そして無線機を取り出した。
「こちらミサキです。迷子の子UFOを4台とも見つけ、マザーシップまで送り届けました」
まずは今回の迷子の保護・送り届け完了の報告である。
「ご苦労様ミサキ。戻ってきてね」
無線の応対に出たのはフロント受付係だった。
「了解」
ミサキが返事した。
場所はウーフースカイクラブの入り口。
結構遅い時間ながらも、スポーツ客や係員の出入りが激しい。
ミサキが入口から入ると、フロント受付係は、電話応対をしていた。
「イタリア語で話してるわね。いつもながら、あの人はすごいわ」
ミサキがつぶやいた。
直後、フロント係員は電話を手短に切り上げ、受話器を置いた。
「あ、帰ったのねミサキ」
「はい。ただいまー」
「さっきマザーシップ側から連絡が来たの。子UFOがケガを負わせてごめんなさい、言い聞かせておきますから、って」
「あ、4台のうち1台が興奮気味で、体当たりしてきたんですが、心配するほどではないです。あとで医務室で救急箱借りてきます」
「今医務室は医務担当者がいるわ。手当してもらいなさい」
「あ、担当者今いるんですね。診てもらってきます・・・」
コンコン☆
「どうぞー」
「失礼します」
場所は医務室。医務担当者に手当をしてもらうのだ。
「聞いたわよー。迷子の子UFOをマザーシップまで送り届けたんですって?」
「はい」
「フロント受付係から聞いたわよ。あなたケガを負わされたんだって?」
「たいした事ないと思うんですが、念のため見てもらおうと思って・・・」
「どれっ、見せてみなさい」
言われるままミサキはケガをした二の腕を見せた。
「ふーん。普通のケガでよかったわねえ」
医務担当者に言われ、ミサキは「はい・・・?」と言った。
「いや、相手は宇宙人でしょ?知らない手術されたんじゃないかなって思ってさ」
「その点は大丈夫だと思います・・・多分」
「ふふふ・・・冗談よ。迷子を送り届けてくれた地球人だもの。そんな相手を宇宙人特有の手術をするような、恩を仇で返すような事はしないと思うわ」
しばらくしてミサキは、腕に包帯をした状態で医務室から出たのだった。
念の為全身を医務担当者に見てもらったのだが、特に問題はない、という事だった。
「はあ、やれやれ・・・」
時間は早朝。
今日の夜勤の勤務が終わり、ミサキは寮の自分の部屋に戻っていた。
さっそくシャワーを浴び始める。
ややぬるめの湯のシャワーを浴びながら、今日の仕事の事を思い出していた。
空での巡回中、迷子の子UFOを4台探し出して、マザーシップに連れて行ってという依頼。
1台が興奮していたものの、無事に4台ともマザーシップに送り返したという事。
そして、戻ってみたら、マザーシップから連絡が来ていた、という話をフロント受付係員から聞いた、という事。
そこでミサキに、ひとつの疑問が浮かびあがった。
迷子の子UFOはもちろん、マザーシップも、こちらにはわからない言語で話していた。
にもかかわらず、フロント係員は、迷子の子UFOを探す依頼や、子UFOたちを無事に連れ戻した件と、ケガを負わせてしまった話の連絡等の内容を、
何事もなくミサキに話していた。
「どうやって、マザーシップや子UFOの言葉がわかったのかしら・・・」
彼女はしばらく考えていた。
フロント受付係は、いろんな国の言語を話したり読んだりしている。
これは、たくさんの国の人が来るからという事で、いろんな言語を学んでいるから、という事なのだが。
「・・・まさか・・・。宇宙語まで話せるとか・・・?」
----まさか、ねえ・・・・
ザーっとシャワーの音が、シャワールームに響き渡った。
しかし真相は逆だった。
フロント受付係が宇宙語を話したというのではなく-----
マザーシップから救難信号を出した側の宇宙人が、地球の言葉を話した、という事だった。
今は宇宙人だってグローバルの時代。いろんな星で活動するには、いろんな星の言葉を理解する必要があるのだ。
ただ、迷子だった子UFO(を操作する宇宙人)は、まだ幼いため地球の言葉を話せず、
また、マザーシップ側もミサキに迷子の子UFOを連れ戻してくれた時は、つい普段の言葉でお礼を言ってしまったのだろう。
「ヤハリ、イロンナ星ヲ 旅スルノナラ、イロンナ星ノ言葉ヲ、覚エナキャネ」
宇宙人たちは、小さくなる地球をみながら、そう言ったのだった。
<おわり>
読んでいただき、ありがとうございます。
ミッションフライトを基にした小説です。