ここはスマブラ選手寮。

バトルイベント期間中に、スマブラバトルの選手たちが寝泊まりする施設だ。


ある日の事。

場所は選手寮の医務室。

「痛っ・・・」

そう言ったのは、一般参加選手のMiiファイターのガンナーのシュリだった。

「ああ、すまんね」

反射的にDr.マリオが言った。

「いえ・・・」

控え目にシュリが答えた。


「はい、終わったよ」と、Dr.マリオが言った。

アルコール綿を採血した部分に当てながら、シュリが「ありがとう」と言った。


シュリが受けていたのは採血だった。 といっても、健康診断ではない。

『本人確認』だ。

『本人確認』を受けるのはシュリだけではない。 他のMiiファイターのデレックやタツヤも『本人確認』の検査を受けるのだ。


「大変だねえ。 しょっちゅう本人確認の検査をしなくちゃいけないなんてね」

シュリの血液が入ったスピッツ(検査用に体液を入れておく容器)を手に、Dr.マリオが言った。

「いえ・・・。 バトルイベント期間中は本人確認検査を受ける事が、ファイターの条件のひとつでしたから・・・」


そう。Miiファイターは随時、本人確認のための検査を受ける事が条件のひとつであった。

この条件を受け入れなければ、選考戦で優勝してもスマブラバトルに参加する資格を持てないのだ。


さて。Miiファイターが、なぜ本人確認の検査するかの説明をしよう。

Miiファイターは『千の顔を持つ』という肩書きがある通り、Miiの種族は顔をいつでも変えられるのだ。

正確には、目や鼻や口や眉毛の、場所や大きさや位置の微調整、肌の色、さらには髪型や色を含むと、千どころではないのだが・・・

また、顔だけじゃなく、身長や体形、はては性別まで変える事ができるのだ。

予告なく顔を変更すると、Miiファイター本人なのかは一見わからないうえに、

他の選手やバトルイベントのスタッフが、誰なのか混乱してしまう。

当然の事ながら、観客から見ても誰なのかわからなくなるのだ。

顔をはじめ体形や性別を変えると誰なのかわからなくなってしまう混乱と、同じ顔と体形のMiiがすり替わるのを防止するため、

Miiファイターはスマブラバトルイベント期間中は顔や体形を変えるのを禁止している。

そして、同じ顔と体形のMiiとすり替わっていないかの確認のため、血液や唾液などの体液や髪の毛などの体毛をを採取して検査する『本人確認検査』を行うのだ。

人間で言うDNA鑑定のような、厳密な検査なのである。

『顔や体形などの変更禁止』『随時行われる本人確認検査は受ける』の2つを承諾するのが、Miiファイターの条件でもあった。


この規定にはマリオが、バトルイベント開催主のマスターハンドに「体液や体毛を採取する検査までしなくても」と、意見をした事もあったのだが・・・

「明らかに青い外見の偽物と同一人物だと誤解された経緯のあるお前なら、ここまでする必要性がある事がわかるだろう?」

と返され、何も言えなかった。

青い偽物と誤解された件とは、マリオサンシャインで青いニセマリオと間違われた話の事である。


------この規定は、『偽物(なりすまし)防止』だけではなく、『本当に本人であるかの証明』を兼ねたものなんだな。

医者でもあるマリオは、改めてそう思ったのだった。


後日。

Miiファイター達は、再度医務室に呼び出されたのだった。

呼び出されたMiiファイターのうちの1人、デレックがこう言った。

「今度の検査は何だろうな」と。


「毎度毎度大変だねえ」

苦笑しながらDr.マリオが言った。

「まあ、Miiの種族の特徴上、仕方ないですから」

と、デレックが言った。

「こういった検査ぐらいしか、本人確認できないからねえ」

苦笑いしてタツヤが言う。

「今度の検査は何の採取ですか?」

シュリが聞いた。

「今度は、血液以外の体液だ、との事だが・・・」

Dr.マリオはさらに苦笑いして言った。

「血液以外の体液?唾液と涙と汗ぐらいしか思いつかないわ・・・」

シュリが言った。

「あとは・・・尿か?」

デレックが少々言いづらそうに言った。

「他は鼻水くらいかな・・・」

タツヤが言った。

3人が考えた事は同じ事だった。

『尿以外のシモの液は、言っちゃダメかも?』と。


「あー。 なんでもいいんだ。 でもな、恥ずかしいと思ったら無難な唾液にした方がいいと思うんだ。

 もちろん他の体液でもいいんだがな。 とはいえ、唾液が手っ取り早いかもしれんが」

3人分のスピッツを手に、Dr.マリオが言った。

「ん? 尿の方が手っ取り早くない?」

タツヤが聞いた。

「うーん。 実は尿も色々あってな・・・。 少々面倒かもな」

Dr.マリオは言葉を濁しながら言った。

「確かにすぐに出せるものじゃない、ってのもあるかもしれないな。 前もって水分をとる必要があるとか」


少し間を開け、Dr.マリオが「いや、そうじゃない・・・」と言った。

「えっ。 まさか、目の前にいる状態で本人に採取させるとか?」

「・・・その通りだ。 検体(検査するために採取した体液)のすり替え防止のためにな。 もちろん3人共そんな事しないとは思うが。

 ただ、個室トイレに1人で入った場合、採取している様子を確認できないから、『本人の検体じゃないのか?』という言いがかりが来たとしても否定できんのだ」

「なんだかスポーツ選手のドーピング検査みたいだなあ・・・」

タツヤが驚いて言うと、Dr.マリオは「事情的に近いかもな。 だから医務室で採取できる種類がいいと思ってな」と言った。


唾液の採取は簡単なものだった。

「はい口開けて舌を出してー」

言われた通りにデレックは口を開け、舌を出した。 そしてその舌に綿棒状の物で軽くこすられる。

「はい終わったよ」

綿棒状の物を小さな容器に入れ蓋をすると、デレックの名前が書かれたシールが容器に貼られた。


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