再び後日、Miiファイターの3人は、本人確認検査のため医務室に呼び出された。

「今回は、体毛を1本、との事だ。 もちろん髪の毛でもまつ毛で眉毛でもヒゲでも、どこでも構わんからな」というDr.マリオの説明に、

「頭部以外の体毛でもいいのかな?」とタツヤが何気なく言ったのだが、

直後彼は慌てて「あっ、ワキとか胸毛とかすね毛とかあるじゃないか!」と言った。

「それでもいいんだが・・・。 やはり髪の毛が無難じゃないか?」

「・・・そうだよな」


「髪の毛を1本抜くのか・・・。 ちょっと痛いけど」

タツヤがそう言って自分の髪を抜こうとした。

「あ。 待って。 抜かなくてもブラシで髪をといたら1~2本は自然に抜けるんじゃないか?」

と、Dr.マリオはブラシを差し出した。

ブラシを受け取ったタツヤは、さっそく髪をとき始める。 しばらくしてブラシをDr.マリオに手渡した。

ブラシに絡まった髪を、Dr.マリオはピンセットで抜くと、チャック付きの小さな袋に丁寧に入れ、封をした。

そしてタツヤの名前が書かれたシールが袋に貼られた。

「なんだか事件の証拠品保存みたいだな・・・」


ところが思わぬ事をDr.マリオが言ったのだった。

「そうだよ。 証拠品だよ」と。

「!?」

Miiファイター達が驚く。

「本人確認と言ってるが、これは表向きなんだ」

「なんだって!?」

「他の者が同じ顔にして成り済ますのを防止するためなんだよ」

「いや、それはわかってるけど・・・。 表向きってなんなんだよ」

「・・・」


「スマブラ選手の一般参加Miiの選考戦で、3人は勝ち残って選手になったんだよな」

「そうでしたけど・・・」

「敗者復活戦なし、もし何らかの事情で選手になった者が辞退しても敗者からの繰り上がりもなしだったな」

「そうそう。 繰り上がりなしで。 これは、勝者を買収するのを防止するためだ、という説明もあったわ」

「予想はついてたけど敗者からの抗議も多かったんだよ。 スマブラ参加希望者はかなりの数なのに3人だけ、というのはおかしいと」

「まあ希望者が多いわりには3人だけというのは少ないな、というのはオレも思ったけど・・・」

「表向きMiiファイターは、その『3人だけ』という事にして、Miiの顔や体形を変えられる特徴を使って、

 3人だけじゃなく複数人数を選手にすればすればいいじゃないか、という意見が出てたんだ」


「----え。 待って待って。 話が飲み込めないわ」

シュリが戸惑った。

「それって、俺とタツヤとシュリと同じ顔にしたMiiを、交代でバトルに参加するって事・・・?」

デレックがそう言うと、Dr.マリオは「その通りだ」と答えた。

「影武者みたいな? ・・・違うか」


「うわあ。 確かにMii種族の特徴上、自分と同じ顔がいるのはよくある事だけど! 私と同じ顔のMiiが私としてバトルに参加するなんて嫌よ!」

「ああ、もちろんこの件は却下されたんだがな。 だから今ここに3人しかMiiがいないだろ?」

「あ・・・そ、そうよね・・・。 驚いたんで、つい・・・」


「しかしな、スマブラ出場選手としてのMiiファイターが決定した後に、選考戦敗退したMii達が、こんな計画を立ててるという情報があったんだよ。

 出場選手として決定したMiiファイターをさらい、自分たちが同じ顔にして、Miiファイターになりすまそうとしている、ってな」


「その件は、どうなったの?」

「もちろん真相を調べるべく、そのMii達のところに聞きに行ったんだよ。 そして、その話及び計画は本当だったんだ。

 悪事計画及び実行下準備という事で、そのMii達は拘束されたんだ」

「知らなかったよ、その話! ・・・なんで俺たちに言わなかったんだろ」

タツヤが首をかしげた。

「たぶん、本物に言ったら現場に行く可能性があるし、行ったら混乱するのはもちろん、その場で捕らえられるかもしれないからな。

 そいつらからしたら、本物は邪魔な存在だし」


「ところで拘束されたって事は・・・今はどこにいるの? 悪事というか、なりすまし計画は、どうなったの?」

シュリが聞いた。

「Miiは顔や体形を変えられる特徴上、なりすましは確かに可能だ。

 しかし、本人確認のために体液や体毛を採取しての検査を不定期的にするため、同じ顔をしてなりすましても、すぐに発覚するぞ、と言ったら驚いてたよ」

Dr.マリオのその説明に、タツヤが驚いて、

「えっ。 待って。 Miiファイターとしての参加の規約に、バトルイベント期間中は顔を変えないのと、

 すり替わりや、他の者のなりすまし防止のために、随時本人確認検査をする事に同意をするのが条件って書いてなかったっけ?

 確かこれ、選考試合の説明の書類に書いてあったと思うけど・・・違ったっけ」

と言うと、デレックは「確かに書いてたぞ! だからなりすまし計画を立てようとする事自体おかしい気がするけど」と言った。

「書いてたわよね。 ・・・でも、いるわよねえ、説明全然読まない人って・・・」

同様にシュリも驚く。


つまり、もともとこの本人確認検査は、Miiファイター本人が他のMiiと入れ替わってる、つまり本人が故意に入れ替わっているのかの確認ではなく、

他のMiiが、Miiファイター本人を連れ去り、別のMiiがMiiファイター本人に成りすましていないかの確認なのである。

そして採取した検体は、本人である『証拠品』なのだ。

もし成りすまし目的で本物のMiiファイターが連れ去られた場合、実際には行方不明になるのだが、なりすましてる者がいるため、表向きは「いる」という状態となる。

しかしその場合、バトルイベント期間が終了した時点で、本物の選考戦で勝ち抜いた本物のMiiファイターが行方不明だという事に気づき、そこでなりすましが発覚する事になるのだが。

ただ、そこまでしてスマブラに参加したいだけの者たちは、そこまで考えていないのだろう。


「ところで・・・。 その拘束されたMii達は、どうなったの?」

シュリが聞いた。

「選考戦を勝ち抜いた本物のMiiファイターを連れ去ったり、なりすましたりしない、という事を約束する事を条件に釈放したよ。

 どっちにしろ計画してた物が意味のない事がわかったという事もあったからな。

 ただ、納得がいかないけど釈放されたいだけの理由でその条件を承諾したフリをしてるのもいるだろうけどな」


「さあ、この話はここまでにして、次はデレックの体毛の採取だ」

あらためてDr.マリオはそう言い、ブラシを手渡した。

「あ。俺はブラシ使わないよ」

「引っ張って抜くのか? 別にいいけど痛いぞ・・・?」

デレックは手渡されたブラシをテーブルに置いた。 そして両手の指で自分の頭をクシャクシャにし始めた。

しばらく頭をクシャクシャにしたあと、頭から手を離した。 そしてその指を確認する。

指の間に、毛が1本絡まっていた。 今ので抜けたものだ。

「はい、髪の毛」と言って、髪の毛が絡まったままの手をDr.マリオに差し出した。

Dr.マリオは苦笑いしながら「強引な採取方法だねえ・・・」と言って、髪の毛をピンセットで挟んで受け取った。

「あ、私もこの方法にするわ」

シュリも同様に、指先で頭をクシャクシャして抜けた髪の毛をDr.マリオに差し出した。

その2人の髪の毛の採取の様子を見てタツヤは、「オレもその方法にすればよかったな・・・」と言ったのだった。


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