「うーむ・・・」

マスターハンドは悩んでいた。


大きく盛り上がった、Wiiという世界で行われたバトルイベント、スマッシュブラザーズX(エックス)が終わり、

いくらか日が過ぎてしまった今は、その余韻が収まりつつあった。


悩んでいるのは、バトルイベントの主催者であり、最強選手でもあるマスターハンドだ。

彼は既に、次のバトルイベントの事を考えている。

そしてマスターハンドの横には、クレイジーハンドがいる。


マスターハンドが、次のバトルイベントで大きく変更しようと考えているのは、出場選手であった。

といっても、出場選手を大幅に変えるわけではなかった。

ただ少々、趣向を変えてみようと思っているのだ。


「ふむ。出場選手の趣向を変えてみる、ねえ・・・」

そう言ったのはクレイジーハンドだ。

そして彼は、「変えるって、どんな感じにだ?」と聞いた。

「以前から考えていたんだが・・・」

「ふむ」

「出場選手に一般参加者も視野に入れようと思ってな」


「一般参加か!」

少々大きい声でクレイジーハンドは言ったが、そんなに驚いた様子でもなかった。

「前々から考えてたんだがな。 マリオカートでも一般参加者が出てくるようになったし、

  我々のバトルイベントでも、そういった参加者も視野に入れた方がいいかなと思ってな」

マリオカートでは、少し前から一般参加者が出るようになっていた。

Miiという種族によるものだ。

従来の固定選手しか出ない大会より、一般参加者も出た方が、従来の選手はもちろん、試合を見る観戦者にも、いい刺激になる。

しかし、マリオカートでは一般参加者のMiiによる不正行為が問題になっていた。
(ここで言う不正行為はチートや改造、及び、バグを突いたショートカット等の事だと思って下さい)

そのため、バトルイベントも一般参加者による不正行為が出てくるのではないかと、マスターハンドもかなり悩んでいたのだが・・・


「いいんじゃないか? 過去にも、参加希望の熱烈な手紙を送ってきた人もいた事だし」

クレイジーハンドは驚くどころか、あっさりと賛成の意思を見せた。

過去にも、スマブラバトルイベントへの参加希望者はたくさんいて、参加希望の熱烈な手紙を送ってきた者もいた。

その都度、バトルイベント事務所の係員が、丁寧なお断りの返信を送っていたのだが・・・


また、一般参加者を視野に入れていた理由は、別にもあった。

スマブラバトルイベント期間中は、選手が一般のファイターに戦いを申し込まれる事もあったりした。

選手たちはバトルステージでは、ガンガン戦うファイターという事もあって、一般のファイターが戦ってみたいという思いもあるのだろう。




「・・・これで買い忘れがないかな」

メモを見ながらマリオが歩いていた。

彼は今、買い物最中であった。

そんな中、突然大声と共に現れた者がいた。

「たのもー!」

いきなりの事で、マリオは驚いた。

「何だ!?」

そこには、見知らぬ男がファイティングポーズで立っていた。

柔道着をきっちりと着、腰には黒帯を締めている。

「バトルイベント、スマッシュブラザーズの出場選手、及び、世界的スーパースターのあなたと、お手合わせしたい!」

「お手合わせ・・・?」

つまり、戦ってほしいという事だ。

「ちょっと待ってくれ! 俺はスマブラではファイターだが、今の状態は普通の人と変わりはないぞ!」

慌てた様子でマリオは まくし立てる。

「それはここがバトルステージではないから言える事であって、あなたはスマブラの出場選手、及び、世界的スーパースターに変わりはない!」

「待ってくれ! 俺は必要外な戦いは望まない!」

マリオはそう言うと、この場から走り去った。


----他にもスマブラ選手が、戦いを挑まれた事があった。

しかし必要外な戦いをしないのはもちろんの事、相手にけがをさせてしまっては大変な事になる。

もちろん戦いを挑むというのは、それなりに戦いの技量があるという事なのだが・・・



「やはり世界中には、いろいろなファイターがいる。 我々もレギュラー選手や従来の括りにとらわれず、参加者の幅を広げるべきだと思うんだ。

 だがしかし、問題も発生すると思う。 一般の者なら、特に危惧している事がある」

「もしかしたら、奇襲されるかもしれない、とかか?」

「そうだ」

「それなら既に、レギュラー選手でもあったじゃないか?」




「おいどうしたんだ! 傷だらけだぞ!」

買い物に出かけて寮に戻ってきたMr.ゲーム&ウォッチ(以下Mr.G&Wと表記)の姿を見て、フォックスが言った。

驚くのも無理はない。 Mr.G&Wは、全身傷だらけだったのだ。

もちろんこの傷は、バトルによって出来たものではない。

「あ・・・ああ、ちょっとな」

「なんだよ、どうしたんだよ!」

「あ・・・。 オ、オイラは身体が薄いから、立体の世界では派手に転倒する事がたまにあるんだよ!」

とっさにMr.G&Wはそう言ったが、本当の理由が言いづらく、苦し紛れに言ったのは一目瞭然だった。

「・・・そうか」

嘘を言ってるのがわかったが、フォックスはそう言うしかなかった。

「今、医務室にドクター(Dr.マリオ)がいるぞ。診てもらえ」

「そうするよ」

痛々しい様子のままMr.G&Wは、医務室へ向かった。


コンコン☆

医務室のドアをノックするとすぐに、「おう、居るぞー。 入りな」と声がした。

声の主は言うまでもなくDr.マリオである。

「入るぞ」という声とともに医務室に入ってきたMr.G&W姿を見て、Dr.マリオは驚いた。

しかし彼は「どうした?」とは聞かなかった。

見てすぐに、わかったのだ。

「・・・奇襲にあったんだろ?」

「やはりわかったか」

「おいおい。 俺は医者だぞ。 不慮の事故によるケガか、そうじゃないケガかはもちろんの事、尋常じゃない原因のケガは一目でわかる」

「・・・だろうな。 隠しきれないのはわかってたよ」

「ちょっと待ってくれ。 手当ての道具をとって来る」

Mr.G&Wは平面の電子世界の人間なので、こちらの立体世界の人間用の治療薬では手当てができないのだ。


「なんかスマンな。 ・・・いてて・・・」

「お前が謝る事はない」

「ああ。 こういう人気者が揃うバトルイベントでは、こういう事は予測できてたもんな」


----Mr.G&Wが言う『こういう事』とは----

スマブラバトルイベントには、人気者がたくさんいる。

人気者がたくさんいる、という事は、特定選手のファンがたくさんいる。

そして、ファンがたくさんいる、という事は----過激な人がいるという事でもある。


買い物中突然、Mr.G&Wは、大勢の人に取り囲まれた。

「マルス様に何するの!」

「殴ったりして許せない!」

「なんでマルス様じゃなくてお前が勝つんだ!」

いきなりの事なので、Mr.G&Wは驚いた。

「な、何だ・・・!?」

彼は確かに、この日のバトルでマルスと戦って勝った。

これにより、マルスの過激なファンに恨まれた模様だ。

そして取り囲んできた者達は、一斉に袋叩きにしてきた。

「うわっ!」

「痛いでしょ? でもお前がマルス様にした事は、こうなのよ?」

「ま、待て! あれはバトルイベントとしての事だ! 確かにマルスも痛いけど、オイラも痛いんだよ!」

「お前が痛いのは関係ない。 でもマルス様に痛い思いをさせた上に勝った事がむかつくんだよ!」

もはや理屈は通用しなかった。


「こっちに曲げても痛くないか?」

Dr.マリオはMr.G&Wの腕を持ち、軽い曲げ伸ばしを繰り返し始めた。

「痛くない」

その返事を受け、今度は反対の腕、手首、脚全体と足、さらには首も軽く曲げ伸ばしさせてみる。

「曲げてみて痛い所はなかったか? 痛くなくても普段と違う違和感もない?」

「ない」

「・・・身体内部の芯に支障はないみたいだな」と言った。

立体世界の人間で言う、骨に異常はないという事だ。

バトルで攻撃し合う事があり打撃にある程度慣れてるとはいえ、大勢の一般の人の襲撃で大ケガを負ってしまう可能性だってあるのだ。

「異常なし、という事で、今日はゆっくりしとけよ」

「うん。 ありがとう。 そうする・・・」

そう言って、Mr.G&Wは医務室を出た。


「・・・スマブラの選手メンバーで、同様の理由で襲撃を受けるのは、あいつだけじゃないんだよな・・・」

静かになった医務室で、Dr.マリオはつぶやいた。

「・・・みんな人気者だからな。 襲撃を受けた事があるのは、おそらく全員なのかもしれん・・・」

彼はため息をつき、椅子に座った。

「俺も・・・あるんだよ。 表向きにはしてないけどな」

人気者が大勢いる場所では、必ずこういう事が出てくるものなのだ。




「ましてや人気者が大勢いる中に一般参加者を混ぜたら、過激なファンの恨みによる襲撃はこれまで以上に起きると思うんだ」

マスターハンドが言った。

「まあ確かにな」

「とはいえ、予想外の事を恐れて従来通りの事しかしなかったら、単に前と同じ事をしてるだけになってしまう。

 どちらにしろ、何事も新しい事をするには必ずリスクが生じる」

「ふむ。 それでは今度のバトルイベントは、一般参加者ありというのは決定なのか」

「一応そのつもりなんだが・・・。 ただ、誰でも参加できるというわけではないようにするつもりだ。

 おそらく参加希望者は大勢いると思うので、何段階に分けた選考をしないとな」

「確かに、参加希望者を募れば、世界中から参加希望者が来るだろうからな」



「しかし一般参加って、どんな種族でもOKなのか? スマブラ選手のレギュラーメンバーには、人間はもちろん、

 ポケモンや宇宙人、亀やら天使やら恐竜やら平面世界の電子人間など、いろんな種族がいるんだぞ」

クレイジーハンドが聞いた。

「いや、種族は限定する。 さすがにどんな種族でも参加可能にしたら、それこそ収集がつかなくなりそうだ。」

「・・・だろうな」

「ただ正直な話、たくさんの種族を選手にした場合、その分種族別の対応をしなければいけなくなるから、一般参加の種族は1種類に絞ろうと思うんだ」

「ずいぶん正直だな。 まあ確かにたくさんの種族を選手にしたら、その分種族別の応対しなくてはいけなくなるから、面倒になるというのは確かだが・・・」

そう言った直後、クレイジーハンドはこう言った。

「・・・もしかして、その1種類の種族って・・・」

「やはりわかったか」

「わかるも何も・・・」

「そうだ、Miiだ。 マリオカートをはじめ、いろんなスポーツや冒険に参加している、実績のある種族だ」


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