翌日。
場所はスマブラバトルイベント運営事務所。
朝から慌ただしい雰囲気だった。
次回のスマブラバトルイベントは、これまでのレギュラー選手に加え、一般参加選手も起用。
一般参加選手の戦闘の種類は、剣士・格闘・ガンナーの3つ。
年令・性別・体格はもちろん、経歴は問わない。
ただし種族はMiiのみ。
参加希望者は幅広く募集。 希望者はバトルイベント運営事務所に連絡すれば後日書類を送付する。
その情報を世界中に発信するのだ。
そしてそれと並行して、次のスマブラバトルイベントに兼ねてから参加のレギュラー選手と、
今回初参加になる予定の者への招待状が送られたのだった。
さらにそれと同時に、招待する選手の種族別の治療薬の取り寄せも行われた。
スマブラの選手にはたくさんの種族がいる。そしていろんな気候の国から来るという事もあり、
ケガはもちろん病気にかかる事も想定して、いろんな種族別の治療薬を用意しておく事が必要なのだ。
もちろんMii専用の治療薬も用意する。人間用では手当てできないのだ。
「それにしても・・・」
クレイジーハンドがつぶやいた。
「どうした?」
「一般参加募集はいいけど、参加希望者はかなり膨大な数になるぞ」
「もちろん予想はしている。 流れとしては、こんな感じだ。
参加希望者はこちらに連絡。 折り返し書類を送る。 記入した書類を送り返してもらう。 こちらは書類を見て選考する。
そして書類選考に通った人には連絡し、後日トーナメント式で選考戦をする」
「意外とシンプルな選考だな。 1次選考・2次選考とかしないんだな」
「あまり選考にゴチャゴチャと種類を増やしても、参加希望者にもこちらにも手間がかかるからな」
「確かにな・・・」
「とはいえ、書類選考の時点で、かなりふるい落とす事になると思うんだ。 実はこういう書類って説明通りに書かない人が多くてな。
選考には字が綺麗とか下手とかそういうのは関係ない」
「そして書類選考に通った人はトーナメント式で選考戦をする、か。 面接はしないんだな」
「面接しなくても、選考戦の時に会うからな。 それに面接なんて種類を問わずに、いわゆるマニュアル通りの答えしか返ってこないから意味がない」
「なるほど」
「まあ本格的な選考は、トーナメント式による選考戦だからな。 何においてもそうだが、強いだけでは勝てないから、どんな者が勝ち残るのかわからない。」
場所は変わって、スマブラバトルイベント運営事務所。
確認の意味でマスターハンドから事務員達に、参加希望者に送る書類の説明を再度していた。
一通り説明が終わったあと、こう付け加えた。
「・・・それから参加規定に追加事項が出来たんだが、印刷に間に合わなかったんで、送る前に手書きで書いてくれ。 手間かけてすまん」
事務員達はすぐに「了解しました」と言った。
そんなやりとりがあった数分後には、事務員のひとりから「さっそく参加希望者がありました!」という声がした。
「折り返し、書類を送ってくれ。」
マスターハンドが言った。
今度のスマブラに一般参加あり、というお知らせは、またたく間に世界へと広がった。
かねてよりバトルイベントに参加してみたい者はたくさんいるので、驚いたり喜んだりした者は、もちろんたくさんいる。
しかし、「参加してみたい=機会があれば参加する」ではなく、参加したいなあ止まりの者も多いのだ。
また、参加してみたいと思わなかった者でも、一般参加募集という話を聞いて、参加したくなったというのも多くなるだろう。
一般参加ありのお知らせに、驚いた者は多かった。
しかし驚いたのは、これまで参加する機会がなかった者だけの事ではなかった。
届いたばかりのマスターハンドからの招待状を見たフォックスの第一声がこれだった。
「!? 今回一般参加ありって本当か・・・!」
そしてまた別の場所で、届いた招待状を見て、
「一般参加ありだって? もちろんバトルに長けてる人だろうね・・・?」
とつぶやいた者がいた。 リンクである。
さらに別の場所で、届いた招待状を見て、「Miiによる一般参加ありだって?」とつぶやいた者がいたのだが、「・・・ついにスマッシュブラザーズでも、Miiによる一般参加を採用したのか」と、そんなに驚いた様子ではなかった。
「レースやスポーツと違ってバトルイベントという事もあって、いろいろと楽しみだな」
そう。 そんなに驚かなかったという者とはマリオだったのだ。 彼はレースやスポーツイベントを時折開催している。
そのレースやスポーツイベントも、かつては一般参加はいなかったのだが、
やはり参加を熱烈に希望する者が増えた事により、Mii種族限定で一般参加を採用したのだ。
ただ、一般参加に対して不安があるレギュラー選手も、中にはいるもので・・・
「・・・マスターハンドから手紙がきてる。 スマブラの招待状だな」
その者は、マスターハンドからの手紙を見て驚いた。
「一般参加ありだって!? Mii限定で?・・・」
そうつぶやいてため息をつき、空に目をやった。
「大丈夫なのかな・・・」
エンジン音と歓声がレース場に響き渡る、マリオカートのレース場。
おなじみのマリオ達のメンバーと一緒に、Miiによる一般参加者もいた。
マリオカートの場合、一般参加は4つのレースによる1カップ単位のみである。
レース参加者の中に、かなり浮かれている女性がいた。 一般参加者のMiiである。
「うれしいわあ、世界中のスーパースター達とご一緒できるなんて!」
一般参加者はたくさんいて、一風変わった人がいるというのは、そう珍しい事ではない。
「特にルイージ様と、ご一緒できるなんて夢みたい!」
すっかりこの女性は舞い上がっていた。
レースが始まり、一斉にレース参加者は走り出した。
そしてアイテムボックスの場所を経由、出たアイテムを他の参加者にぶつけたり、もしくは亀やバナナの皮で防御したりと、
マリオカートではいつも通りの光景が広がっていた。
やがて走者は全員2周目に差し掛かった。
ルイージがアイテムボックスを通過した。 出たのばボム兵だった。
ボム兵は効果が強力な反面、自分も巻き込まれる危険性もある。
ルイージは、ボム兵を前に向かって投げた。
そしてそれは、さきほどのハイテンション女性が運転するカートに当たった。
当たったと同時に、ボム兵は大きな爆発をし、その衝撃で彼女はコースアウトして落下してしまった。
もちろん、コースアウトしてもレース案内係のジュゲムが釣り上げてコースに戻してくれるので、心配はいらない。
但し、その分遅れてしまうのだが・・・
ボム兵の爆発による落下と復帰で時間を食ってしまったので、件の女性は最下位になった上に周回遅れになってしまった。
彼女は明らかに、さっきとは違う様子だった。
そしてファイナルラップの3周目の途中で、『順位が確定したのでレースを終了いたします』というアナウンスが流れた。
この場合、乗ってるカートもしくはバイクを押して、今いるコースを出、次のレースのコースに向かわなければならない。
(それが最終レースの場合、表彰所に向かう)
しかしこの女性は、乗っていたカートを置き去りにし、次のレース場に向かっていたルイージの方へ走っていった。
そしてルイージに近づくと、怒鳴り始めたのだった。
「あなた、酷いじゃないの!」
突然の事にルイージは驚いた。
「えっ?」
「何とぼけてるの? あなた、私に何したか、わかってるの?」
一方的に怒鳴られて、ルイージは戸惑ったものの、すぐにレース中の事だとわかった。
「ああ、レース中にアイテムのボム兵を投げた事ですか?」
「なに平然と言ってるのよ! 私はそのボム兵の爆発を受けてコースアウトしたのよ!」
「・・・はあ・・・」
「確かに、このレースはアイテムを使っての妨害は当たり前だけど、そこまでする事ないじゃない!」
「・・・」
「私、帰るわ!」
「帰るって、まだ途中でこの後のレースもあるんだけど・・・」
「そんなもの放棄するわよ!」
そう言って、その女性は、背中を向け、レース参加者用の通用口へ向かって行ったが、途中で足を止め、ルイージの方を向いた。
「あなたがそんな人だとは思わなかったわ!」
彼女はそう言うと、再び背を向け、レース参加者用の通用口から出て行ってしまった。
ルイージは茫然とそれを見ていた。
「何であれ、たくさん人が参加すれば、中には変わった人がいて当たり前だけどな」
ため息をつきながら、ルイージはつぶやいた。
「レース結果に納得いかなかった人が、表彰所に乗り込んで抗議してきたりする事もあったしな」
ガサガサと音を立てて招待状の便箋を改めて見てみると、ルイージは驚いた様子で「えっ?」と言った。
「今回・・・僕は隠れ選手じゃないんだ」
これまでルイージは、最初から出ずに、最初から出場している選手が特定条件を満たすと登場するといった、
『隠れ選手』という形であったが、今回は、最初からバトルに出る、といった形になっていた。
「そうか、最初から出場する選手なんだ・・・。 初めてだから、色々と兄さんに聞いてみるかな」