後日。
一般参加Miiの選考戦が終了した数日後である。
場所はスマブラバトルイベント運営事務所。
そこに今、3人のMiiがいた。
この場所に不慣れな様子で、まるで初々しさ丸出しな3人のMiiは、かなり緊張気味であった。
その様子はまるで、学業を終えたばかりの新入社員のごとく-----
「えー、では、隣の部屋で、椅子に座って待ってくださいとの事です」
事務員が、3人のMiiに伝えた。
場所は変わって、事務所隣にある部屋。
3人のMiiが、この場所にいる。
この部屋は、長机とパイプ椅子が数台あるといった、シンプルな部屋だった。
まるで大きな会議室のような感じだ。
3人のMiiは、さっきの説明の通り、パイプ椅子に座りはじめた。
彼らは、かなり緊張気味な様子だった。
こんな状態で、ちょっとした冗談を言おうならば、大爆笑するかもしれないが、誰も冗談を言う者はいなかった。
しばらくして、部屋にマスターハンドとクレイジーハンドが入ってきた。
「やあ、待たせてすまんな」
「待ちくたびれて寝てる者もいるかもな」
なんて事を言いながら。
やがて改まってマスターハンドが言った。
「・・・さて、ここにいる3人とも・・・。 もう、説明の必要はないよな?
競争率の高い、スマブラバトルイベントへの参加の選考戦で勝ち抜いたファイター達よ!
まずは出場おめでとう! しかし戦いはこれからだ。 今は最初の1歩以前の状態である。」
そう。 3人のMiiとは、スマブラ一般参加希望Miiの選考戦に勝ち抜いた者たちである。
しかし、3人からは、明らかな緊張感が漂っていた。
まあ、こんな状態で緊張するなというのが無理な話かもしれないが・・・
「こんな状態で力を抜けなんて言葉は無茶かもしれん。 こういう時は、まずは自己紹介してもらうものだ。
とはいえ、何言ったらわからんから、とりあえずは名前と戦闘の種類だけを各自言ってくれ。
まずは、そちらから見て左端に座ってる者からだ」
マスターハンドにそう言われ、左端に座ってる者は、すぐに立った。
金髪と青い目が特徴の男性だ。
「はい。 デレックといいます。剣士です」
「うむ。 剣士で名前がデレックか。座ってくれ」
「はい」
デレックは素直に座った。
「・・・座ろうとした時に、誰か椅子を引いてくれないかなー・・・」
マスターハンドが言った。もちろん冗談なのだが。
改めてマスターハンドは、「では、真ん中に座っている者、立って自己紹介してくれ」と言った。
真ん中に座っている者は、すぐに立って話始めた。
「シュリといいます。 ガンナーです」
シュリは茶色い髪と黒い目が特徴の女性だった。
「うむ。 ガンナーのシュリか。 数少ない女性参加希望者の中から、よく勝ち残ったな。 座ってくれ」
「はい」
シュリが座ろうとした時、3人目のMiiが、「椅子を引いた方がいいのかなあ」と言った。
「俺が椅子を引いた方がいいのかもな」と、デレックが言った。
「椅子を引くのは私じゃないかしら?」
シュリがその言葉に応じた。
そのやりとりを見て、マスターハンドは「そのまま座ってくれ」と言った。
「では次の3人目の者、立って自己紹介してくれ」
マスターハンドがそう言うと、3人目の者は素直に立った。
「タツヤといいます。 格闘家です」
タツヤは黒髪と黒い目が特徴の男性だった。
「うむ。格闘家のタツヤか。 座ってくれ」
「はい」と、タツヤは素直に座ろうとしたが・・・
「椅子は・・・」と、ぼそっと言った。
「あー、適当に座ってくれ」と、マスターハンドは答えた。
「適当に座るって・・・難しいな・・・どうしようかな・・・」
タツヤはしばらくつぶやいていたが、いい考えが思いつかなかったので、そのまま普通に座ったのだった。
「3人とも、私の冗談に付き合ってくれてありがとう。 もし、冗談を受け止めずに素で応じられたら、どうしようかと思ってたが」
マスターハンドはそう言うと、改めて3人が座っている机の前に立った。
「さて、今日は、一般参加Miiへのスマブラバトルイベントに関する説明や、期間中滞在する施設の説明、禁止事項や制限のかかる事柄の話なのだが、」
「その前に入れておかない説明がある」
直後クレイジーハンドが大きなボードを立てて見せた。
そこにはスマブラバトルの選手の分類の説明であった。
『最初から出場する選手』、『隠れ選手』、『Miiによる一般参加』と書かれてある。
『最初から出場する選手』とは、毎度おなじみ最初から出場している選手の事で、
その『最初から出場する選手』が、特定の条件を満たしてから登場する『隠れ選手』、
そして今回初の『Miiによる一般参加』である。
ボードに書かれていた表示のうち、『Miiによる一般参加』と書かれている部分は、よく見るとシールが張られていて、角の部分が折られている。
これは角の部分をつまんでシールをはがす事ができる仕組みになっている。
「今時点では、Miiによる一般参加という名称だったが、別の名称を着ける事になった。
確かに一般参加ではあるが、ずっとこのままの名称にするのも何だかな、という話もあってな。」
「では発表する。 Miiによる一般参加、つまりここにいる3人の名称は・・・」
マスターハンドがそう言ったが、直後こう言った。
「こういう時に、ドラムロールの効果音が欲しいな・・・。 無理な話だがな」
「では、改めて発表する。 Miiによる一般参加、つまりここにいる3人の名称は・・・」
激しくビリッ!という音がした。ボードのシールをはがした音だ。
しかしシールの下には、文字がなかった。 はがした勢いが強すぎたので、シール下に書かれた文字部分まではがれてしまったのだ。
3人のMii達は、どう反応しようか迷った。
しかし、マスターハンドとクレイジーハンドは違った。
「ボードに何かあった時のために、予備を用意しておいた」
その言葉に、おおー、さすがー、という反応があった。
「やはり、念の為に用意をしておくというのは大事なんだな・・・」
格闘家のタツヤがつぶやいた。
すぐに、同じボードが用意され、3人のMii達の前に立てられた。
さきほどと同じく、『最初から出場する選手』と『隠れ選手』の説明が書かれてある。
そしてその下には、一般参加Miiと書かれたシールが貼られてる・・・と思いきや。
シールは貼られてなかった。
それどころか、その場所には『Miiファイター』と書かれていたのだ。
「では改めて説明をするが」
と、マスターハンドが話し始めたが・・・
「あのー・・・」
剣士のデレックが言った。
「どうした?」
マスターハンドが聞いた。
「シールが貼られてなくて、名前が隠れてないです」
「えっ」
あわててマスターハンドがボードを確認した。
そこには、『最初から出場する選手』と『隠れ選手』の説明文、そしてその下には貼られているはずのシールが貼ってなかった。
今日発表するはずの名前がシールで隠れずに、そのまま表示されている形になっていた。
「あー・・・」
シールが貼られてないのを確認したマスターハンドは、どうしようか考えたが、すぐにボードを横向きに放り投げた。
ボードはシュルシュルと音を立てて空を舞い、床へ落ちていった。
そして、ぽふっ、と音を立て、ボードは床に落ちた。
「ではもう、改めてボートを使って説明する必要はないな。
Miiによる一般参加、つまりここにいる3人は、スマブラバトルイベントでは、Miiファイターという名称だ。」
「デレックはMiiファイター剣士、シュリはMiiファイターガンナー、タツヤはMiiファイター格闘、という名称になる」
新たな名称を告げられ、3人のMii達には改めて緊張感が走った。