「あら、気が付いたのね」
パティが最初に耳に入った言葉が、それだった。
「・・・? 」
「あなた溺れてたのよ。絶叫の滝のふもとでね」
「滝の・・・ふもとで? 」
そう言われ、パティは改めて自分のいる場所を観察し始めた。
どこかの部屋。 そして自分はベッドの上にいる。
目の前には、見知らぬ女性がいた。
「あの・・・ 」
どうして自分はここにいるの、そう聞きたいパティだったが、その前に、ここはどこですか、と聞いてみた。
「レイクピア・キャッスルよ」
「・・・レイクピア・キャッスル・・・ 」
「そう。 お城だけど王様がいるわけでもなく、単なる観光場所なんだけどね。 その中の医務室よ」
「医務室・・・? 」
「あなた、絶叫の滝のふもとで溺れていたんだけど、まさか身投げとかじゃないわよね」
「えっ・・・ 」
まさか身投げじゃないわよね、という問いには否定はできなかった。
というのも、事故ではなく故意に、絶叫の滝に飛び込んだ事には変わりないのだから。
動揺しているパティの様子を見、「・・・事情があるみたいね。 あまり追及しないけど 」と、女性が言った。
誤解されているのがパティにはわかった。 しかし普通なら滝に飛び込むなんて事はしないので、誤解されて当たり前である。
「あの・・・レースは・・・ 」
パティが言った。
「レース? そういえばあなた、レーサースーツを着ていたわね。 何かレースがあったのかしら? 」
「へ!? 」
素っ頓狂な声をパティはあげた。 その様子に女性も驚く。
「え。 だって私、ウーフーアイランド2のコースで走ってたのよ」
「コース? レースコース? ここはそんな大掛かりなレースはないわよ。 時折、自転車レースはあったりするけど」
「私は、絶叫の滝の場所で、飛び込んで---- 」
「飛び込んだ? 」
飛び込んだ?と聞かれて、パティは慌てて言い直した。
「あっ、・・・コースアウトしたのよ! ・・・で、ジュゲムが釣り上げてくれるはずなんだけど」
「ジュゲム? 」
女性は首をかしげた。
「そうよ、ジュゲムが釣り上げてくれるはずなんだけど、釣り上げてくれなかったのよ! 本当、何してたのよ! 」
パティは興奮し、ベッドから降りはじめた。
そして、少し頭をさげ、こう言った。
「看病して頂き、ありがとうございます。 これから私、職務怠慢なジュゲムに抗議に行ってきます」
女性は、突然の事に驚き、声が出なかった。
その一方、パティはすごい勢いで、部屋を出て行ったのだった。
自分を看病してくれた人は、ここはレイクピア・キャッスルと言っていた。
という事は、城を出ると、そこはレースコースのはず。
そしてここで今レースをしているのなら、絶叫の滝に飛び込んだ参加者を釣り上げるジュゲムと会えるはず。
抗議してやるわ!
パティは勢いよく城の出口へ向かった。
途中、「さっき運ばれてきた方ですね」と聞いて来た者がいたが、「失礼、先を急ぐので」と言ってスルーしたのだった。
「暑い・・・ 」
パティが今来ている服は、レーサースーツではなく、シャツにパンツといった軽装だった。
さっき部屋にいた女性が、着替えさせてくれたのだ。
城の正面出入り口のドアを開けたパティは、愕然とした。
目の前に広がるのは、見覚えのあるようで、ないような、そんな光景であった。
コツコツコツ・・・
背後から足音がし、パティは振り向いた。
そこには、先ほどの女性がいた。
パティは「ここ、どこなの・・・ 」と聞いた。
「レイクピア・キャッスルです」
「いや、そういう意味じゃなくて」
「そういう意味じゃなくて、って? ・・・ああ、土地名ね。ウーフーアイランドよ」
「ウーフーアイランド・・・ 」
「はい、ここはスポーツを楽しむ方や観光客が、たくさん訪れる島です」
女性の言葉に、パティはしばらく呆然としていた。
自分は、マリオカートのウーフーアイランド2のコースを走っていた。
マリオカートのコースは他にも、ドルピック島や、ルイージマンションや、ドンキーコングのジャングルなど、特定の世界を基にしたコースがある。
(ドルピック島=スーパーマリオサンシャインの舞台の島)
ウーフーアイランドのコースも同様に、特定の世界を基にしたコースなのである。
今いる土地は、ウーフーアイランドだと聞いた。
そして、今いる場所は、その中のレイクピアキャッスルである。
パティは改めて、目の前の光景を見た。
確かに、この場所はウーフーアイランドである。
但し、さっきまでパティがレースをしていたのとは違っているが。
もしかして、自分は、マリオカートのコースのウーフーアイランドではなく、
基となった土地、つまり本物(?)のウーフーアイランドにいる、という事・・・なの?
パティは、そう思わざるを得なかった。