「・・・話をまとめると、あなたはマリオカートのウーフーアイランドを模ったコースを走っていて、絶叫の滝の前でコースアウトして滝壺に落ちた、と」
パティは無言でうなずいた。 実は故意に落ちたのだが、そう言うと身投げと勘違いされるのでコースアウトしたと言っているのだ。
場所は医務室。 さっきまでパティが眠っていた場所だ。
「従来ならジュゲムが釣り上げてコースに戻してくれるはずが、なぜか来なかったのね」
再度パティはうなずいた。
「服着ていたから泳げずに、そのまま水中に沈んだか何かの状態になり、気がついたらこの部屋のベッドにいた、と」
「その通り、間違いないわ」
パティはそう答えたが、直後に疑問がわいた。
ウーフーアイランド2で、絶叫の滝に飛び込む参加者は多い。 パティも、その中の1人である。
しかしそれなら、他にもここにワープ(?)して来た者もいるはずだ。
「あの、こういうのって、もしかして私が初めてなのかしら・・・? 」
パティは聞いてみたが、女性の返事は、「初めてじゃなかったら、こんなに戸惑わないわよ」だった。
「・・・だよね」
とは言ってみたものの、謎は深まるばかりだった。
「ところで」
女性が言った。
「あなたの名前はパティね。着ていたレーサースーツに『Patti(パティ)』って刺繍がしてあったの」
「あ。 はい」
「私はサンディよ。 ----ところで。あなたはどこの国の方かしら? 」
「B国。 ウーフーアイランドみたいに暑い南国で--- 」
パティの話をサンディは遮った。
「B国? 聞いた事ないわ。 どこの国? 」
「ええっ!? 世界地図ではかなり大きく表示されるのよ! 」
パティは手で空中に円を描き、「ここにJapanがあって、ここをこっちの方向の----」と説明を始めたが、
サンディはさらにこう言ったのだった。
「Japan? 聞いた事ない国だわ。 どこの国なの? 」
「何ですって!? 」
2人の話は噛み合っていないようだ。
-----何、まさか私、異世界に来てしまったの?
あのショートカット、いや、絶叫の滝への飛び込みが、異世界への入り口?
もしかして、あのショートカットって、ジュゲムが勘違いして運ぶんじゃなくて、異世界を介して運ばれるわけ?
ジュゲムに運ばれずに、その異世界に入り込んっだって事なの!?
パティは考え込んだが、サンディの「どうしたの? 」という声に、我に返った。
そして、ぽつりと言った。
「・・・改めて聞くけど・・・。 ここはどこなの----? 」
「レイクピア・キャッスルよ 。あ、ウーフーアイランドって言った方がいいかしら」
「・・・」
「あの、もしかしたら・・・ 」
パティは、おそるおそる聞いた。
「何かしら? 」
「B国は聞いた事ないって言ってたわよね。 もしかして、ここからB国に戻る手立てが全くないって事では・・・ 」
「・・・それは何とも言えないけど・・・ 」
サンディはそうい言うと、部屋の隅にある本棚へ向かった。 そして何やら探し始める。
やがて1冊の本を取り出すと、パティの所へ戻ってきた。
持ってきたのは地図帳である。 観光目的の情報誌のような物ではなく、地形以外は道路や設備の場所が書かれたシンプルな物だ。
サンディは、ウーフーアイランド全体が描かれている見開きページをパティに見せた。
「全体図がこんな感じなの。 あなたが言ってるウーフーアイランドのレースコースも、こんな感じかしら? 」
「違う部分もあるけど、だいたい同じだわ」
「この島は、外部からの出入りは船からだけなの。 島内では飛行機は飛んでるけど、あくまで島の中限定で、島から離れて飛んで行こうとすると、
『島へ戻ってください』って警告が出るから、飛行機で島を離れるのは無理で・・・ 」
パティはサンディから地図帳を受け取り、ざっと見てみた。
見たことない国名や島名ばかりだ。
パティが住むB国や、さっき話したJapanはもちろん、見覚えのある国名・地名が全くない。
「あの・・・。 もしかして私、異世界に来ちゃったって事なの・・・? 」
異世界に来た、なんて言い方したら、変に思われるかもしれない。
しかしサンディの答えはこうだった。
「・・・その可能性は、ありそうね。 それ以前に、あなたの世界側でのウーフーアイランドを模したレースコースの絶叫の滝から、こちらの世界の絶叫の滝に来た、という話から考えると、
違う世界に来た、という説を挙げても、おかしくないわよね」
「ところで」
サンディが言った。
「あなた、帰る手立てがないのなら、こちらで住むという事になるけど・・・ 」
確かに、帰れないなら、ここにいるしかない。
いや、今見つからなくても、あとで見つかる可能性もある。
パティはしばらく考えたが、帰れない以上は仕方がない。
「でも、住むといっても、私はこちらに知り合いがいないし、住む場所もないし・・・」
「あら、ここがあるじゃない」
「!? 」
「私は、ここのお城で、住込みで働いてるのよ。 いえ、私だけじゃないわ。 ウーフーアイランドにある設備は、ほとんどの従業員が住込みなの」
「へえ・・・ 」
「もちろん住む以上は働いてもらうわよ。 といっても、こちらの土地はあまりよく知らないようだから、まずは土地を覚えてもらわなくちゃね」
成り行きで、ウーフーアイランドに住み、働く事になったパティ。
これから、どうなるのだろうか。