パティが案内されたのは、レイクピア・キャッスルの中の奥にある部屋だった。
レイクピア・キャッスル自体が観光名所という事もあり、その部屋は『関係者以外立ち入り禁止場所』の領域になっている。
要するに、案内された場所は、観光地の舞台裏の場所なのだ。
「ここがパティの部屋ね」中は、シンプルな部屋で、1人で住むには充分な広さであった。
パティが部屋を見回していると、サンディは、従業員用設備の説明を始めた。
シャワー室、食堂、従業員用出入り口、など。
しかしパティに、ひとつ疑問が浮かんだ。
急に従業員が増えた形になったにもかかわらず、寮のような部屋をすぐ用意できたのはなぜ、という事だ。
サンディの答えは、こうだった。
「単に仕事が続けられる人が少ないからよ。 すぐやめちゃう人が多くてね。 いつも寮の部屋は余分にあるのよ」
「・・・なるほど」
「さあ、今日はゆっくり休んでね。 明日からこの土地での生活が始まるわ」
そう言ってサンディは部屋を出た。
「あ! 待って! 」
パティが引き止めた。
「どうしたの? 」
「ここの、他の従業員の方は? 同僚になるんだから、お互い紹介したいんだけど・・・ 」
「ここの、って、ここレイクピア・キャッスルの? 」
「・・・そうだけど」
「ここの係員は私1人だけよ」
「へえ・・・ 」
「他にもいた事はあったけど、さっきも言ったとおり、続かない人が多くてね」
「そうなの・・・ 」
「今日1日で色々あり過ぎて疲れたと思うの。 パティ、ゆっくり休んでね」
そう言ってサンディは部屋を出て行った。
バタン。
ドアを閉じる音がする。
静かな部屋の真ん中で、しばらくパティはボーっとつっ立っていた。
確かに今日は、色々あり過ぎた。
マリオカートのレースに参加。
ウーフーアイランドを模したコースで、ショートカットとして絶叫の滝に飛び込んだ。
転落した参加者をコースに戻すジュゲムは来ず、陸上に戻れなかった。
気が付いたら、本物の?ウーフーアイランドにいた。
そして、自分の国への帰る手立てがなく、ここで生活する事になった。
頭がゴチャゴチャする。
「とりあえず、寝るかな。 その前に、シャワーを浴びよう・・・ 」
これまで起きた事は、夢であってほしい。
パティはそう思った。
寝て、目が覚めたら、自分の部屋のベッドにいた、という事であってほしい。
そう願いつつ、彼女はベッドに入った。
そして、数分もしないうちに眠りについた。
1日でたくさんの事があったので、疲れているようだ。
翌朝。
パティが目覚めて最初に言った言葉が、「夢じゃなかったのね」だった。
目覚めた時にいたのは、自分の部屋のベッドではなかったのだ。
目の前に広がるのは、昨日サンディに案内された部屋だった。
「おはようパティ」
サンディが声をかけた。
「・・・おはよう」
冴えない返事をしたパティを見て、サンディが言った。
「昨日の出来事が夢だったらよかったな、目覚めたら自分の部屋で寝ていた、という事だったらよかったな、と思ってるんでしょ? 」
無言でパティは首を縦にふった。
「・・・でしょうね」
場所は変わって従業員用食堂。
食堂といっても、簡単なキッチンとテーブルがあるだけの場所だ。
サンディは、パンフレット状の地図を2枚、パティに差し出した。
2枚のうち片方を指し「こっちが観光客用のパンフレット地図。 観光やスポーツ目的で来た人に渡している案内地図なの」、
次に、もう片方を指し「こっちが従業員用のパンフレット地図。 従業員だけ使える通路や設備の説明もあるわ」と、説明をした。
地図を受け取りながらパティは、おそるおそる聞いた。
「あの・・・。 ここの土地を覚えるって・・・今日1日で・・・? 」
その言葉にサンディは笑いながら答えた。
「まさか。 ウーフーアイランドは広いのよ。 1日どころか数日で設備の場所や特徴を覚えられないわ。 それに私も全部覚えてるわけではないのよ」
「そうなんだ・・・ 」
「さ、朝食が済んだらすぐに土地を覚える散歩に出かけてね」
「あの・・・迷子になった場合は・・・ 」
「その場合は近くにある設備の係員に話しかけるといいわ。 とはいえ、そんなに複雑な土地じゃないから迷子になる可能性は低いと思うけどね」
「いってきます」
「行ってらっしゃい。 気をつけてね」
パティはサンディの見送りを背に、歩き始めた。