「あの・・・ 」

夜、レイクピア・キャッスルに戻ったパティは、サンディに聞いてみた。

「私はマリオカートのウーフーアイランドを模したレースコースでコースアウトして、こっちの世界に来たんだけど、

 その話をしたとき、サンディはこんなケースは初めてだって言ってたわよね」

「言ったけど・・・。 まさか島で同様の人がいたとか? 」

「その通りなの」

「本当なの? 」

「その人は、嘘言ってるようには見えなかったわ。 レースでどんなマシンだったか聞いてみたら何事もなく答えてたし・・・ 」

「同様に絶叫の滝から落ちてきたって言ってたの? 」

「あっ、場所は違うって言ってたわ。ヴィラ・コソコソで倒れてたんだって」

「ヴィラ・コソコソかあ。 情報が私のところまで来なかったかもしれないわ。 本当にパティのようなケースは、初めてだったもの」

もしかしたらサンディは本当は何か知ってるかもしれない、と思ってたのだが、どうやら単なる勘繰りだったようだ。


翌日もパティは、島の土地を覚える為に、島じゅうを歩く作業に出ていた。

「常夏の島とはいえ、やはり朝は涼しいわね」

パティが住む国B国も、南国で暑いものの、ウーフーアイランドとは違った暑さである。

「よっ、パティ」

パティに話しかける者がいた。 言うまでもなくヨシュアである。

「あら おはようヨシュア」

パティは挨拶を返した。

「今日はオレ、タウンでの掃除が仕事なんだ」

(追加説明:ウーフータウンはマリオカート7での名称です)

具体的な仕事を任せられたという事は、ここで生活する地盤が出来てきたという事でもある。

もちろん、彼らは元の世界に帰りたいのだが、帰る手立てがないため、ここで生活するしかないのだ。

そこに、「おいヨシュア!」と声がした。 昨日、話をしている最中に、ヨシュアに『観光客を口説くんじゃないぞ! 』と言った人だ。

「そっちの人は、昨夜言ってた、自分と同じ状況の人か? 」

ヨシュアは、「はい、そうです」と答えた。

その後パティが「パティといいます。 一昨日からレイクピア・キャッスルで住込みで働いています」と言った。

「おう、そうかそうか。 立ち話もほどほどにな! 」

「はい」

声の主は、そのままヴィラ・コソコソの方へ向かって行った。

「今の人は、ヴィラ・コソコソで住込みで働いてる人なんだ。

 倒れていて行き場のないオレに、帰る手立てが出来るまで、ここで住込みで働きなよ、って言ってくれたんだ」

「私と同じだわ」

「・・・それにしても」

ヨシュアが言った。

「帰る手立てって、どうやって見つけるんだろう。 見つからなかったら、ずっとここで住むって事になるんだけど」

「私もわからないわ。 でも、この土地で生活していくうちに、何かわかるかもしれないわね」



あまり立ち話するのもなんなので、適当に切り上げ、パティは島内歩きへ、ヨシュアはタウンの方へ向かって行った。

今日長話しなくても、ここに住んでいる以上は、明日も会えるのだから、長々と話をする必要はない、と2人は思っていた。



「暑いわね・・・」

パティはつぶやいた。

彼女の住むB国も暑い国なので、もとから暑さには強い方なのだが、ウーフーアイランドとは違った感じの暑さなので身体への負担は違っていた。

「ちょっと日陰で休もうかしら」

パティはそう言って、日陰になっている場所で座り込んだ。

----いつになったら、帰る手立ては見つかるのかしら。

そう考えながら、彼女は空を見た。

青くて綺麗な空。時折、鳥が飛んだり、スカイスポーツを楽しむ人が空中を飛んだりしている。

----でも自分は1人じゃない。

帰る手立てがない自分を、住込みで働かせてくれた人がいる。

そして、同じ状況の人がいる。

なので、戸惑ったり心が折れたりする事はない。


「さあ、そろそろ島歩きを再開しようかしら」

パティは立ち上がり、地図を手に歩き始めた。

日陰で涼しくなっている場所から、一気に日光が当たる暑い場所に移動しはじめる。

「やはり暑いわね・・・」

彼女は、そうつぶやいたが、直後、自分に異変がある事に気が付いた。

日陰から日向に出た時の事だった。


「私・・・影がない!? 」


パティの足の下の地面には、影がないのである。

まるで地面にはパティの存在がないかのような雰囲気さえも漂っていた。


・・・いや、まさか、ねえ。


パティは辺りを見回した。 島を歩いている観光客やスポーツ目的の人達は、確かに影はある。

それ以前に、さっきまで日陰になっている場所で休憩していたため、影がないという事は、ありえないのである。

パティはタウンに向かって走り出した。

同じ状況のヨシュアも影がないのか確認のためである。

タウンで清掃作業中のヨシュアは、取り乱しているパティに驚いた。

「どうしたんだよ!? 」

「影が・・・影が・・・ 」

「影? 」

地面に座り込むようにして、パティはヨシュアが立っている地面を見てみた。


ヨシュアも、パティ同様に、影がなかった-----


「おい大丈夫か、落ち着け」

「ヨシュアも影が--- 」

「影? 影がどうしたんだよ。 落ち着け」

「あ・・・あ・・・ 」

なおも取り乱した状態のままのパティに対し、ヨシュアは、「あそこでちょっと休憩するか? 」と言った。

そして彼はパティを支えるような体勢になり、公園の『願いの泉』の場所へ向かった。


場所は願いの泉。 タウン内の名所の1つである。

ここは時折、観光客がトレビの泉のごとく小銭を投げ入れたりしている。

そこにパティは腰を下ろした。 横にヨシュアも座る。

「どうしたんだよ? 」

「影がないの・・・。 私もヨシュアも」

「影? 」

「ちょっと私の前に立ってみて」

パティにそう言われ、ヨシュアはパティの前に立った。

「地面を見て」

「・・・何だよ・・・? 」


ヨシュアも、こちらの世界に来てから初めて気づいた。

----自分に影がないという事を。


そして地面には、ヨシュアの存在がなかったかのような雰囲気さえも漂っていた。

彼は、島を歩く観光客やスポーツ目的の者には、影があるのを確認すると、「なんだよ・・・ 」と言って、座り込んでしまった。


人間の影は、太陽の光を受け、それを遮る事によってできた物、つまり生身の身体の証なのである。

それがないという事は、つまり-----


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