ザーーーーーー
そんな音は うんざり、なんて様子で、降っている雨を見ている女性がいた。
南の島ウーフーアイランド。
ここはマリンスポーツやスカイスポーツが好きな者が世界中から集まる島である。
年中いい天気なイメージを持たれるこの島も、雨季はあるのだ。
雨季だと、スカイスポーツやマリンスポーツはもちろんのこと、観光も、行うには向いていない。
そのため、この時期でのウーフーアイランドを旅行する料金は、1年のうちで一番安価な時期なのである。
・・・しかし。
下調べもせず、安い料金に飛びついてくる客というのは、どの業界にも現れるものだ。
そんな事を知らずにやってくる観光客・レジャー客が、今日もウーフースカイクラブの正面玄関に、今日もやってきた。
「やれやれ・・・」
大雨に降られて大変だったー! と言わんばかりの観光客が、ウーフースカイクラブの正面玄関に現れた。
「今年も、フロント受付係は大変ねえ・・・」
来たばかりの来客の応対を観察しながら、従業員の女性がつぶやいた。
観察している女性の名前はミサキ。
ウーフーアイランドで、ライフガードと警備員を足したような仕事、つまりこの島に滞在中の者の安全を守る仕事をしている者である。
そして彼女も、通常気候・雨季関係なく仕事をしている者のひとりだ。
ピーピー ピーピー ピーピー ピーピー
ミサキが腰に装着している無線機の呼び出し音が鳴った。
「はいミサキです」
今は休憩時間なのだが、異常事態が発生すれば関係なく応対しなければならないのだ。
「俺だリョウだ。 休憩中のとこ悪いけどな、タウンで迷子発生らしい。 行ってくれないか」
無線の主は、ミサキの同僚のリョウだった。
「了解。 リョウは現在地どこなの?」
「パウダー・ホワイト・ビーチだ。 この悪天候の中、波乗りしようとする奴がいたんだよ。 事故になるのが目に見えてる。 今レスキューを呼んだところだ」
悪天候の日は、荒れてる波こそスリルある波乗りができると思ってる悪質な波乗りが来たりする事もあるのだ。
ミサキは、今日もそんなのが現れたのねえ・・・と、ため息交じりにつぶやき、
直後に「今から、タウンに向かうわね!迷子の特徴は?」と言った。
「○○のキャラクター絵のピンクの服と、△△のロゴ入りの赤い靴の、3歳ぐらいの女の子だ」
「了解!」
彼女はレインスーツに身を包み、自転車に乗っている。
さすがに大雨の中でロケットベルトを装着したり、飛行機で移動するには無理がある。
なので雨季は自転車で現場に向かう事が多いのだ。
「暑いわ・・・」
レインスーツの中は通気がよくない。 それを暑い気候の中着るのだから、まるでサウナスーツを着ているようだ。
タウンはウーフーアイランド内での唯一の街の形をした場所である。
ボウリングなどの室内スポーツ施設や、噴水や時計台など、観光客やスポーツでの訪問者の人向けの場所がある反面、
この辺り一帯に住んでいる住人の多くが施設やホテルの従業員といった、現実的な部分もあったりする。タウン北部にあるジョギング広場にミサキは到着した。
キッ、と音をたて、自転車が止まった。
そして再度、今度はゆっくりなペースで自転車をこぎ始め、タウン内を見回りを始めた。
とはいえ、迷子がじっとしているケースは少ない。
無線ではタウンに迷子がいるという連絡だったが、
ミサキがここに着くまでの間に別の場所をウロウロしている可能性もある。
また、到着までに迷子の保護者と無事に再会できている可能性もある。
どちらにしろ、一旦見回りをする必要がある。
「いないわね・・・」
タウンを軽く1周したものの、迷子らしき子供を見かけなかった。
見かけなかったからといって、見つかりませんでした、で、終了するわけにもいかない。
ミサキは自転車から降り、押して歩き始めた。
ジョギング広場のすぐ近くには自転車コースがある。
ミサキは自転車コースの少しはずれにあるスペースに自転車を止め、ワイヤーキーで鍵をかけ始めた。
今度は周辺を歩いて巡回をするのだ。
もし仮に、既に迷子が保護者と再会していたとしても、他の異常を発見するための巡回でもある。
「お。 ここの警備の人?」
ミサキは通りすがりの人に声をかけられた。
彼女が今着用しているレインスーツには『Security guard』と書かれている腕章を巻いてあり、
ひと目で警備等の安全を守る係員だという事がわかる。
そういう事もあり、何かあった時に話しかけられる事も多い。
「あ、はいそうです」
ミサキはそう返事すると同時に、何か他に起きたのかな、もしそうなら、無線で他の隊員に連絡しないとな、と思った。
話しかけた側は北の方角を指し、
「あっちの方で、小さな子供が1人で泣きながら歩いているのがいたんだ。 迷子じゃないかな」と言った。
「あ。 はい! 実は今、この辺で迷子発生って聞いて来たとこなんです。 もしかしたらその迷子かも・・・」
ミサキは一瞬、ぱっと明るい顔になり、「ありがとうございます、見てきます!」と言い、声をかけた人が指した方向に向かった。
「でも・・・あっちの方向って、滝や細い橋がなかったっけ?」
そう思った瞬間、ミサキは走り始めた。
その場所は、観光やロケットベルトでの空中散歩には向いてるのだが、小さな子供が1人で歩き回るにはとても危険な場所なのである。