「・・・まさかさっきの新人隊員のコが、その迷子だったなんて・・・」
ミサキの口からは驚きの言葉しか出なかった。
「やはり会いたい人って、その迷子だったのね・・・」
そう言ったのは医務担当者だ。
「あら、さっきの話、聞いてたのね」
ミサキがそう言うと、医務担当者はドキッとしながら、「そ・・・そうなの・・・。それとリョウからも話を少し聞いていたのよ」と答えた。
情報源は噂好きの友達からのメールだという事は言えなかった。
まあリョウから聞いたというのも本当なのだが。
「リョウからも?」
「ミサキさんから話を聞こうと思って、A島スカイクラブに電話したら、
雨季に合わせて休暇を取った、ウーフーアイランドに会いたい人がいるから、という返事が返ってきたんだって・・・」
ミサキがいる隣のベッドに、ユウナは横たわっていた。
ユウナは、夢を見ていた。
それは15年前と同じく、豪雨で雷鳴が鳴り響く悪天候な光景だった。
彼女の横には、迷子の小さな女の子がいる。
その女の子は、かつての自分と同じような外見であった。
鳴り響く雷鳴は大きくなっていき、やがて大きな落雷へと変化した。
ドーン!!
落雷の衝撃で、ユウナと迷子がいる場所のそばにある大木が倒れてきた。
この子の手を引いての避難は無理!
そう思ったユウナは、とっさに迷子を突き飛ばした。
それと同時に、大木はユウナの真上に-----
ユウナは目を覚ました。
「た・・・。 大木が・・・」
そんな事を言いながら。
「気がついたのね」
傍らにいる医務担当者が言った。
「あ・・・」
目覚めたばかりで頭がはっきりしないユウナは、どう返事をしたらわからなかった。
しかし、頭がはっきりしない理由が、もう一つあるのだ。
もちろんそれは、自分をかばって死んだと思った人が生きていて、それを知らずにさっき相手と会っていた事である。
ユウナは両手で顔を覆うと、こう言った。
「どうすればいいの・・・わからないわ・・・。 頭の中の整理がつかない・・・」
彼女の前にはミサキの姿はない。医務担当者がいるだけだ。
「確かに、自分をかばって死んだと思った人が生きていると知ったなら、普通なら戸惑うわよね」
ユウナはゆっくりとうなずいた。
「でも悩んだり戸惑ったりしたのは、あなただけじゃないわよ。 同様にミサキさんもね」
「----!」
「しかも、その迷子だったあなたに会いに来ているじゃないの」
「・・・」
「リョウの話によると、ミサキさんは雨の中、ハラハラつり橋の辺りで立っていたらしいんだけど・・・」
「・・・その場所は・・・あの時ミサキさんに・・・」
「その時大木が倒れてきたのって、その場所だったの・・・?」
医務担当者の問いに、ユウナはうなずいた。
「だったら尚更会ってきなさい。 その場所で立っていたって事は、もしかしたら当時の迷子、つまりあなたに見つけて欲しかったんじゃないかしら?
だってその当時の迷子は、現在はこの島で安全を守る仕事に就いているという事を知ってるから、
すぐに会いたければウーフースカイクラブの事務所に来るはずじゃないかしら」
「た・・・確かに・・・」
医務担当者に背中を押され、ユウナはミサキがいるベッドの方へ向かった。
医務室のベッドルームは、各ベッドごとに厚手のカーテンで仕切られていて、簡単な個室になっている。
普段は全部カーテンは開いていて、閉めるのはあくまでベッドで寝てる人がいる、もしくは、眠っている妨げにならないようにするかのどちらかなのだ。
ユウナは、ミサキがいるベッドのカーテンをそっと開けた。
「あの・・・」
と、おそるおそる言いながら。
「・・・!?」
ユウナは驚いた。 というのも・・・
「ミサキさんがいない・・・?」
ベッドにいるはずのミサキがいないのだ。