「いい天気になってよかったわ」
さっきの大雨と稲光が嘘のように、空は気持ちのいい青空になっていた。
ミサキとユウナは、手をつないで歩いていた。 もちろん、水たまりに気を付けている。
雨上がりの青空の下、2人は歩いていた。
---突然、ユウナはミサキの手を放し、走り出した。
「どうしたの!?」
驚いたミサキだったが、直後ユウナは「ママーっ!」と言ったのだった。
「ああ、ママを見つけたのね。 よかったわ・・・」
-----かくん!
ミサキの頭部が急激に前に倒れた。
「・・・え」
目の前の景色は、さきほど見た青空ではなかった。
それより前に見た光景と同じ、大雨の模様----
「・・・あれ? 私、寝てしまってたの?」
ミサキは首を前後左右に振り、コキコキと音を立てた。
「ねえ、ユウナちゃん・・・」
彼女はそう言い、ユウナがいた場所の方を向いたが----
「---いない!? どこ行ったのかしら!」
慌ててミサキは立ち上がり、レインスーツを着ないまま、降りしきる雨の中に入ろうとした。
しかしその時、空が光り、直後激しい雷鳴が鳴り響いた。
「きゃあっ!」
彼女は声をあげ、一瞬体をこわばらせた。
何してるの私! こんな状況だと、小さなユウナちゃんの方がもっと怖い思いしてるんだから!
ミサキは自分に言い聞かせた。
バシャバシャと音を立てて、走り始める。
すぐにユウナの姿は見つかった。 彼女は雨に打たれながらも、地面に座り込んでいる状態だった。
ミサキはユウナに駆け寄り、両手をユウナの肩にのせ、顔に頬を着けた。
「ごめんね・・・」
小さな子供はじっとしられないので、ちょっとでも目を離すと、すぐにいなくなってしまうものだ。
ユウナがこの状態になったのも、きっとそうなんだろう。 と、ミサキは思っていた。
しかし、それは違っていた。 ユウナがミサキの手を離れ、ひとりで歩いていたのは、別の理由だったのだ。
「おしっこ・・・」
どうやら、トイレを探していたらしい。
「ああそうか。 トイレを探していたのね」
小さな子供とはいえ女の子である。 さすがに、その辺で済ませちゃいなさい、とは言いづらい。
とはいえ、さすがにこんな状況ではトイレを探す余裕はない。
「どこか物陰で済ませちゃおうか。 私が見えないようにするから」
しかしユウナは首を横に振った。
「えっ、違う?」
さらに聞こうとミサキはユウナの顔をじっと見たが----
ユウナは恥ずかしそうな様子で、それ以上は何も言わなかった。
それがどういう意味なのかを感じ取ったミサキは、それ以上何も聞かずに「わかったわ」とだけ言ったのだった。
ミサキが改めて「さあ、さっきの場所に戻りましょ」と言った時だった。
直後、さっきよりも激しい雷鳴が鳴り響いた。
「・・・!」
そして空が光った。
「あ・・・」
やがて音も光もしなくなったかと思いきや、直後に大きく、それでいて激しい音がした。
「・・・まさか近場に・・・落ちるとか!?」
そんなミサキの不安を無視するかのごとく、ドーンという激しい音が鳴り響いた。
「あ・・・。 もしかして島内に落ちた・・・?」
声にならない声をあげ、彼女はユウナを両手で抱いた姿勢でその場に座り込んでしまった。
「いやあ・・・っ・・・」
その姿勢のままミサキは硬直した。
「・・・。」
そして、ユウナを強く抱きしめる格好で顔をうずめ始めた。
そんな彼女を あざ笑うかのごとく、空は唸り続ける。
やがて空は激しく光り、それと共に、凄まじい音が落ちたのだった。
ドドーン!
「いやあああ!」
落ちた音は、地面の鳴り響きも連れてきていた。 地面がビリビリと音がして響き始める。
「恐い・・・恐いよう・・・」
ミサキは雷が怖い。
安全を守ったりする仕事の者でも、怖いものは怖いのである。
「もうやだ・・・助けて・・・」
彼女は座りこんでユウナを抱きしめる姿勢のまま、涙を流し始めた。
そんな2人を、雨は容赦なく打ち続ける。
・・・そっ・・・
ユウナが手を伸ばした。 伸ばした先は、ミサキの頬であった。
ぴたっ、と音がする。
「えっ?」
驚くミサキだったが、構わずユウナはミサキの頬に手のひらをつけた。
「・・・?」
ミサキが顔をあげると、ユウナと目があった。
「・・・そ・・・そうよね。 私が恐がってどうするんだろ」
自分の顔につけられた手を、今度はミサキが握った。
「ごめんね。 ユウナちゃんのママ達が見つかるまでは、あなたは私が守るからね」
きゅっと軽くユウナを抱きしめ、ミサキは立ち上がった。
「さあ今度こそ、さっきの場所に戻ろうね」
幼いユウナに勇気づけられたミサキだったが、直後に思わぬ光景を目にした。
彼女たちの近くにそびえる大木が、激しく揺れているのだ。
「先ほどの衝撃で揺れてるのね」
構わずに、さっき雨宿りしていた場所に戻ろうとしていたミサキだったが----
ギギギ・・・ギィー・・・
そんな音を立て、揺れていた大木が、彼女たちの方向に倒れてきた。
「!?」
この大木は、かなりの老木で、今の衝撃を機に倒れてしまったようだ。
ミサキは とっさに、ユウナの手を握っている手を放した。
そして彼女が取った行動とは----
ユウナを激しく突き飛ばしたという事であった。
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