突き飛ばされたユウナは、少し離れた場所で転倒した。

ユウナは一緒にいる人間に突き飛ばされたという事により激しく泣き始めた。

しかし直後に彼女は泣くのをやめ茫然とした表情になった。


-----ユウナの目の前には、倒れた大木がある。

突き飛ばされた瞬間の記憶は全くない。

ただ、突き飛ばされた直後の瞬間に、大木が地面に倒れたというのは わかっているのだが。


何が起きたのか全くわからず、それでいて、目の前にはさっきとは全く違った大木がある状態なのだ。


ザザッ、ザザーーーッ・・・

雨とは違った別の音がした。

「おいミサキ! お前ハラハラつり橋辺りに迷子と一緒にいるんじゃないのか? なんかそっち方面から雷とは違った激しい音がしたんだが」

ミサキの腰に着けている無線から声がした。 声の主はリョウだった。

しかしユウナには、何の音なのかわからない。

「おいミサキ! なんかあったのか!? 返事ぐらいしろよ!」

2度目のリョウの呼びかけのあと、すぐに倒れた大木の中から声がした。

「大丈夫。 迷子は無事だから・・・」

ミサキは、そう無線で返事をした。

「おい! そうじゃねえよ!」

「・・・・・・」


ガサガサと雨風の音がする。

大木を目の前にしたユウナにとっては、激しい音に感じた。

その音に混じって、こんな声がする。

「おいミサキ! 聞こえるなら返事しろよ!」

「誰かハラハラつり橋辺りの様子を見に行って!」

後者の声は、受付係による無線の声である。

「了解。 見に行ってきます」

巡回中の別の隊員が無線応対をし、ハラハラつり橋の方に向かっていった。

「頼む! 俺は悪質サーファーの応対で手一杯でな・・・」

そう言ったのはリョウだった。



数時間後----

ユウナと母親は再会した。

彼女は今、母親に抱っこされている状態だった。

そして目の前に横たわっている大木を重機で持ち上げられる作業が始まった。

ユウナは泣かずに、その作業をじっと見ている。

地面はもちろん、大木も雨に濡れているので、重機による作業進行は、やや遅めだった。

大木が少し持ち上がると、そのままの状態になった。

その下には、ミサキの姿があった。

それを見たユウナは、ミサキがいる方向に身体を乗り出した。慌てて母親が抱っこの姿勢を変える。

「あ・・・」

小声でユウナが言った。

ゆっくりと担架に乗せられ、ミサキは運ばれ始めた。

「あ・・・。あ・・・ミサキ・・・ちゃん・・・!」

大きな声でユウナが言った。 そして身体をミサキを乗せている担架の方へ身体を乗り出した。


----しかしミサキは、返事どころか反応すらしなかった----


ユウナは母親の方に向きなおすと、激しく泣き始めた。

幼いとはいえ、今、目の前で起きている事を把握しているのである。

そしてその反面、やはり幼いので、どうしていいのか、わからないのだ。

しかし、どうしていいのか わからないのは、ユウナだけではなかった。

ユウナの母親と父親である。

自分の子供が助かった代わりに、あの女性係員(ミサキの事)が、あんな事になったなんて----

「ごめんね・・・」

ユウナの母親が言った。

「あなたを迷子にしなければ、こんな事にならなかったのに----」


「あの・・・」

話しかけられ、ユウナの母親は我に返った。

「そちらの女の子も、念のためケガがないか検査をいたします。 一旦ウーフースカイクラブの事務所まで来ていただけますか」

話しかけたのは救急隊員のひとりだった。

「あ・・・。 はい」

ユウナの母親は、そう返事をした。




数日後。

ザーーーーー

降り続けている雨と空模様を見つつ、リョウはつぶやいた。

「そろそろ今年の雨季も終わりそうだな・・・」

彼は今、ウーフースカイクラブのフロントから外を見ていた。

例年だと、雨季が終わると島に来る観光客やスポーツに来る客が増えるので、

この時期は従業員はそれに向けて準備で大忙しなのだが、今年は違っていた。

今年の雨期明けの準備は、島じゅうに生えている木の点検を重点に置いていた。

落雷直撃ではなく落雷の衝撃で倒れた大木があったという事もあり、木の強度チェックをしているのだ。


ラジオから天気予報が流れてくる。

安全を守る仕事の一つとして、天気予報のチェックも大事なのだ。

『今年のウーフーアイランドの雨季の収束は、〇月△日になる模様です。 島へお出かけのみなさんは、とても楽しみですね!

 そして、現地で働いているみなさんは、これからが忙しくなりますね。 がんばってください!』

「ああ、今と違った忙しい日々が、また来るんだなあ・・・」

リョウは、そうつぶやいた。 そして、フロントの受付の方を向いた。

何やら重い雰囲気の家族連れがフロントで何やら話をしていた。

「あれは・・・こないだの事故の女の子の家族だ」

その家族連れとは、ユウナとユウナの両親であった。 彼らはフロントで何やら話をしたあと、出迎えのバスに乗り込んで帰って行った。

その光景をじっとみていたリョウが、こうつぶやいた。

「あの迷子の応対は、ミサキに頼まずに俺が行けば、こんな事にならなかったのかな」と。


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