「なんで、お兄ちゃん帰って来ないの!?」

ソフィアが大声で言った。

「どうして? まさか家出したの?」

彼女の問いかけには、周りの大人は答える事はできなかった。

「おとなしく待ってなさい。 エリックはそのうち帰ってくるわよ」

「そのうちって、いつ!?」



ナワバリバトル中に倒れ、救急車で運ばれたエリックは、搬送先の病院で応急処置を受けた。

しかし、かなり進行していた彼の病気は、運ばれて検査された時には既に末期どころではない症状で----


「ソフィアを呼んでくれ! 話がしたい!」

エリックは処置室で叫んでいた。

「何の話だって? ソフィアはいつも、早く人型になってお兄ちゃんと一緒にナワバリバトルしたいって言ってたんだ!

 ・・・それが・・・ 果たせそうにないって・・・」

荒い息の状態で、彼は叫んだ。


けたたましく心電図のアラームが鳴り響く処置室の中で、それとは別の、波のない電子音が大きく鳴り響いた----



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「お兄ちゃんどうして帰ってこないの!? だったら、わたしがハイカラシティに行く!」

まだ幼体なので、おぼつかない足つきの状態で、ソフィアは強引に外に出かけようとしたが、

「ソフィアやめなさい!」

と、周りにいた者に、強く引き留められてしまう。

しかし「だって私が・・・!」と、ソフィアが周りの者をはねのけようとした時だった。

急にソフィアの動きが止まったのだった。

そして彼女は、その場に倒れ込んでしまった。

そう、ナワバリバトル中に倒れたエリックと同じ形で-----


ソフィアとエリックがかかっている病気は、治る見込みがない。

そして、その病気は、人型がかかると進行が早い。

しかし人型がかかると進行が早いというのは、幼体の時にかかっても、ゆっくりではあるが進行するという事で----





----ここはどこ?

気が付くと、ソフィアは家の外にいた。

----お兄ちゃんの所に行かなくちゃ。 ハイカラシティにいるよね。

病弱で身体がしっかりと動かない彼女だったが、なぜか今ではしっかりと歩けるようになっていた。

----えーっと、ハイカラシティには電車に乗って、〇○駅で乗り換えるんだよね 。わたしは幼体だから電車料金は無料だし、そのまま乗って行けばいいよね。

何事もなかったように、駅の改札口を通過するソフィア。 駅員はもちろん、周りの者も何も言わなかった。

しかし、駅員も周りの者も何も言わなかったのは、別の意味があった。

「今、幼体が通らなかった?」

「何言ってるの。 気のせいじゃない? 誰もいないわよ」

なんて会話があったのだが、ソフィアは気にしていなかった。


『次は△△駅~、△△駅~。 ナワバリバトルなどでハイカラシティに行く場合は、次でお降りください』

ソフィアが乗ってる電車でアナウンスが流れた。

「いよいよハイカラシティだわ」

やがて電車が△△駅に到着し、開いたドアからソフィアは降りて行った。

ハイカラシティへの案内図は、駅に大きく張り出してあるので、幼いソフィアでもすぐにわかった。

しかし、ハイカラシティは広い。 ましてやソフィアは幼い子供なのである。

彼女はすぐに迷子になってしまったのだった。


「お兄ちゃん、どこにいるの?」

「お兄ちゃんを一緒に探して!」

ハイカラシティを行き交う若いインクリングを引き留めようとしたソフィアだったが、誰も彼女を気に留める者はいなかった。

それどころか、「今、何か声がしなかった?」「気のせいじゃない?」という反応ばかりだった。

「そこに幼体いなかった?」「何言ってるの、気のせいじゃない?」

という反応もあったのだが・・・


----どうして、わたしに気づかないの・・・。 もしかして、幼体が見えないの?

   そんなワケないよね・・・

若いインクリングが集まるハイカラシティの広場の隅っこで、ソフィアは座っていた。


「あの・・・。 お兄ちゃんを一緒に探してください」

前を通った若いインクリングに声をかけてみるも、やはり気づかずにそのまま歩いて行ったのだった。

「・・・」


「このままじゃ、だめだわ」

ソフィアは強引な行動に出る事にした。 そして、ハイカラシティにいくつか設置しているベンチの周辺を歩いていく。

やがてベンチに座っている1人のインクリングの女性に近づき、頭部のゲソを引っ張ってみた。

「きゃっ!」

引っ張られた側は、その声と共に振り向いた。

その引っ張られた側のインクリングの女性は-----ミーアであった。


ソフィアはミーアの協力のもと、探していた兄のエリックを見つける事ができた。

そしてエリックと共にハイカラシティを出た。



----それ以来、エリックとソフィア兄妹の姿を見た者は、いなかった----



そして今。

場所はハイカラシティの中の、ミーアが座ってるベンチ。

「まさか迷子のお世話するとは思わなかったわ」

先ほど買ったジュースを飲みながら、ミーアはつぶやいた。

「とはいえ、迷子を放置してたら、何らかの形で事故に遭ったり、変な人に連れて行かれる危険性があるものね・・・」



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