「次は第12試合です。おそらく50分後ぐらいになるかもしれませんが、時折試合の進み具合を確認してください」
デレックは説明を受け、次の試合の参加チケットを受け取った。
「・・・」
コロシアムの出入り口横にあるベンチに座り、デレックはボーっとしていた。
この剣術大会の参加者だけじゃなく、観客の多くは、デレックがスマブラで剣士として参戦していた事は知っている。
知らなかった者も、今日知ったという人は多かった。
なんだか、以前参加したときと違う目線で見てるヤツが多いんだよな------
この剣術大会の参加者の中には、かつてのMiiファイター選考戦に参加した者もいて、
デレックに対して『やっかみ』がある者がいるのは確かなのだが。
モヤモヤした気分の中、思わぬ者が、デレックに話しかけてきた。
「デレックさんですね」
彼は驚いて声の方を向いた。そこには、この剣術大会の開催者がいた。
「はい。そうですけど・・・」
「お話があります。来てくれませんか」
「ここじゃ、だめですか?」
「いやその・・・。ゆっくりと話し合いがしたいのです」
「・・・?」
デレックは、コロシアム内の個室のような場所に案内された。
個室には、簡易テーブルやパイプ椅子が並べてあり、どちらかというと簡易的な事務所に近いような部屋だった。
「お話って何ですか」
さっそくデレックが開催者に質問をした。
「まあその。君がスマブラの剣士で参戦した事を、多くの方が知ってるのは、君もご存知だよね?」
「はあ・・・」
「そういう実績がある以上、剣での戦いが相当強いのも、わかってる方も多い」
「はあ・・・」
遠まわしな言い方ばかりされ、デレックは、どう返事をしたらいいのか、わからなかった。
「さっきの試合も、相手を一撃で倒したんだよな」
「えっ!?いやあれは、おそらく相手側が・・・その・・・。こんな言い方したら失礼ですけど、その相手側は弱かっただけなのだと思います」
「それは、『自分より弱い』という意味なんだろう?」
「えっ・・・」
開催者側が何が言いたいのか、全く意図がつかめず、ただただ戸惑うデレックだったが-----
「実は・・・。先程の試合を観た参加者の中の多くが、試合参加辞退を申し出たんだ。
あんな強いの参加してるなんて、勝負にならないだろ、ましてやスマブラに参戦した経緯がある者だしな、って」
「いや待ってください。さっきのは、本当に相手が弱かっただけで-----」
「それは『自分より弱い』って事だろう」
「・・・」
もちろん、どんな勝負であれ、強いだけでは勝てないのでは、あるのだが。
「この剣術大会関係者で話し合ったんだが・・・
デレック君。このまま参加辞退者が増えたら大会が成り立たなくなる。試合参加を辞退してくれないか。
もちろん参加費は、お返しする。」
デレックは即座に断ろうとした。
「お断りし-----」
-----!?
なんだか威圧するような雰囲気を感じた。但しそれは開催者の方からではなかった。
開催者の後ろ側、つまり簡易事務所の奥側の-----
その場所には人が座っていた。
開催者がデレックを連れてくる前から座っていたようだ。
そこにいたのは、この国をはじめ、この一帯の地域の剣術に関する事を取り仕切る団体の幹部だった。
-----なんでそんな人が、ここにいるんだ・・・?
戸惑うデレックに、団体の幹部が言った。
「剣術大会は、ここだけではない。世界中で、たくさん開催されている。今回の大会を辞退するぐらいなら別に構わないのでは?
別にこの大会で資格が発生するとか辞退したら何か剥奪されるとか、そういう事は、決してないんだからな」
「・・・」
さらに団体の幹部は、デレックにたたみかけた。
「君は、自分のせいで参加辞退者が続出してる話を聞いて、良心が痛まないのかね?」
「まあまあ、そんなに詰め寄らなくても」と、開催者が言ったが-----
雰囲気的には断りづらくなっていた。
断りづらいというより、『断ったらどうなるか、わかってるだろうな』という状態なのである。