「・・・それにしてもさ。わざわざこの服装に着替えさせるって事は、何かと戦う事になるんじゃない?」
シュリが言った。
「戦うとしても誰とだろ・・・」
タツヤがつぶやいた。
「念のため、剣を装備しておくか」
デレックは、いつでも剣が抜けるように装備し始めた。
「あ、私もアームキャノン着けておいたほうがいいわね・・・」
同じくシュリもアームキャノンを装着し始めた。
「俺は・・・。用意が要らないな」
タツヤが言ったが、デレックが「手をガードするグローブは持ってきてたの?」と聞いた。
「ん?ああ、グローブは紙袋に衣装と一緒に入っていたんで大丈夫だ」
突然、彼らの周辺の光景が変わった。
今はスマブラバトルイベント運営事務所の隣の会議室にいるはずなのだが、急に周辺が暗転した。
しばらくして、見覚えのある場所へと変わっていった。
「この場所は・・・」
「『戦場』のステージだわ!」
「やはり戦う事になるんだ!・・・って、戦うって誰とだよ!」
相手が誰なのかわからない。しかし戦う事になるのは確かだった。
デレックは剣を抜き、身構えた。
シュリは、いつでも撃てるように用意した。
タツヤはファイティングポーズをとった。
「さあ来い!」
同時に3人が言った。
直後、『Ready Go!』と、
バトル開始のアナウンスが流れたのを合図に、バラバラと音を立て、大勢の者が上空から降りてきた。
それは、白い線が入った黒い服のMiiの集団、謎のMii軍団だった。
謎のMii軍団はバトルステージに着地すると、デレックとシュリとタツヤの3人へ攻撃してきた。
しかし『謎のMii軍団』は、かつての『謎のザコ敵軍団』と同様、強攻撃を加えれば撃退できる。
かつてのMiiファイター達は、スマブラでバトルしていた時と同様に、強攻撃を加えて蹴散らしていたが、
中には骨のある奴もいて、苦戦を強いられてしまった。
「ぐぅっ・・・!」
みぞおちに、まともに攻撃を喰らったタツヤが、ひざをついた。
みぞおちを狙うのは、格闘では弱点突きなのである。
その攻撃をした“謎のMii”は、邪悪な笑みを浮かべた。
タツヤはひざをついた状態で、前屈みの姿勢のまま動かなかった。
そこへ更に攻撃しようとする“謎のMii”の前に、デレックが立ちはだかった。
そして、大きく剣を斜めに振り上げ、そいつを薙ぎ払った。
「・・・すまんなデレック」
「気にするな。それより立てるか?」
「ああ、なんとかなりそうだ」
「まだこいつらが、何体いるのかわからんな・・・」
「無理しないで。私達がいるからね!」
シュリが言った。
「すまんな心配かけて。でももう大丈夫だ」
タツヤはそう言って立ち姿勢になったものの、みぞおちへの強力な攻撃は結構、あと引くもので----
(痛い。正直まだ苦しい・・・)
「お!」
デレックがバトルステージの端に、何か見つけたようだ。
舞い降りてくる謎のMii軍団をよけ、見つけた物へ向かっていった。
やがて、それを手にすると、タツヤの場所へ戻っていった。
その時、タツヤの背後へ攻撃する“謎のMii”がいたので、剣先で弾いた。
そして彼は持ってきた物を差し出した。
「これ食べて!」
それはマキシムトマトだった。
「・・・すまん・・・」
タツヤは差し出されたマキシムトマトを素直に食べようとしたが、その手が止まった。
「どうした?」
「デレックの方がダメージの%が高い」
そう言ってタツヤはマキシムトマトを返そうとした。
実際、ダメージの%を確認すると、3人のうちデレックが一番数値が高かった。
「あー・・・えーっと・・・」
デレックは戸惑った。しかしその直後、背後からタツヤの頭部のてっぺんを鷲掴みにする者がいた。
驚いて振り向くタツヤだったが、頭をわしづかみにする者の正体がシュリだとわかり、「なんだよ、おどかすなよ」と言った。
シュリは低い声でこう言った。
「・・・いいから素直にマキシムトマト食べなさい・・・!」
「・・・すまんな・・・」
タツヤは素直にマキシムトマトを食べる事にした。
ダメージが回復すると共に、気が軽くなったような気がした。
そして、みぞおちに受けた攻撃のダメージも、軽くなったような気がした。
「サンキュ2人とも!」
マキシムトマトの回復は、効果はダメージ回復だけなのである。
特定の身体部分への治癒効果はない。
もちろん、軽くなった気がするだけなのだ。
あくまで『気の問題』なのである。
「さあ来い。遅れを取り戻す!」
タツヤは張り切り、ファイティングポーズをとった。
更に上空から降って湧いてくる謎のMii軍団。
強攻撃で撃退するMiiファイター達。
『いつまでこれが続くんだろうか。』
3人がそう思っていたその時-----
ドーン!
シュリが横向き強攻撃をし、1体の“謎のMii”を吹っ飛ばした。
これが最後の1体だったようで、これ以上“謎のMii”が舞い降りてくる事はなかった。
「今のが最後の1体のようね・・・」
シュリがつぶやいた。
バトルステージは、不気味なほど、静かになった。
そして、辺りが薄暗くなる。
「静かだな・・・」
デレックがつぶやく。
「嵐の前の静けさかもよ?」
シュリが言った。
「・・・もしかしたら、マスターハンドと戦う事になるのか?」
タツヤがそう言った直後----本格的に辺りは暗くなった。
「これはもしかしたら、本当にマスターハンドと戦う事になるかもよ!」
「ここまで来て引き返せるかよ!」
「もちろんだ!」
そして3人は、同時に言った。
「かかってこい!」
暗闇の中、身構える3人。
やがて辺りは明るくなった。
そして予想通り、目の前にマスターハンドが現れた。
改めて戦うのか、と思いきや-----
周りの景色は、先程の会議室に戻っていたのだった。
マスターハンドの前には、3人のMiiがいた。
一瞬、再度謎のMii軍団が現れたかと思って身構えたが-----
どう見ても、その3人のMiiは、謎のMii軍団の黒づくめの服装とは違う、いでたちであった。
彼らは盛り上がっていた。
「いやー、すごかったな!まさかこのバトルを間近で見られるとは!」
「かっこよかったわ!」
「戦う事がわかった時に、かかってこい!って言ってましたね!」
そんな3人の盛り上がりぶりに驚きながら、デレックが聞いた。
「あ、あのー・・・。そこにいるMiiは・・・」
「今度のSwitchのスマブラの、Miiファイター達だ」
マスターハンドが説明すると、そのMii達は軽く頭を下げ、自己紹介をした。
「イサムです。格闘です」
黒髪と黒目が特徴の男性Miiが言った。
「ミセラです。射撃です」
茶髪と茶目が特徴の女性Miiが言った。
「コンラッドです。剣士です」
金髪と青目が特徴の男性Miiが言った。
盛り上がり続ける新Miiファイター達に、シュリはこう言った。
「盛り上がるのはいいけど、これからは、あなたたちがするのよ?」
しかし、返ってきたのは「いやー・・・実は、スマブラの選手になったという実感がなくて・・」という言葉だった。
「あーでも、それわかるな。オレもそうだったもんな」
「俺もだったな。実感湧くまで結構時間かかったもんな」
「私も・・・。レギュラー選手に囲まれた時も『夢なら覚めないで・・・』って言ってたわ」
かつてのMiiファイター側も、その言葉に同意をしたのだった・・・