物語の舞台であるブルースカイ島は、Miiという種族が住む島だ。
そして島にあるマンションに住む住人Miiは、近いながらも違う空間に住む人間という種族の者が作った・・・という事らしい。
仕組みは謎に包まれている部分が多いものの、はっきりと言える事を挙げると、
ブルースカイ島のマンションの第一住人は、ここに住むMii達の創生者の分身である、という事であった。
ただし、あくまで分身は分身で、創生者本人とは別人なのである。
創設者は住人を作っただけでなく、住人達の悩みを聞いてサポートしたりアドバイスしたりもする。
創設者は住人から視点では、島の第一住人のである自分の分身を作った本人という事と、島を取り仕切る者という意味で、『島主』と呼ばれている。
ブルースカイ島は現在、第一住人の「『島主』の分身」を含んで40人程で、住んでる住人の性別比率は男女ほぼ同じである。
たくさん人数がいるので住人同士が友達になったりするのはもちろん、恋に落ちたり、なかには結婚したりする者たちも出てくる。
それをサポートしたりするのは『島主』である。
あくまでサポートだけで、決断するのは住人本人である。 もちろんアドバイスしたけど残念な結果になってしまった、という事もある。
「最近、不思議な夢を、よく見ます・・・」
住人は時折、こんな事を話す。
彼らはよく、手乗りの小鳥になった夢、バンジージャンプで紐が着いてない夢、特撮レンジャーヒーローになった夢、など、摩訶不思議な夢をよく見るのだ。
しかし、住人の一人は、こう言ったのだった。
「それとは違う、なんだか本当に不思議な夢を見るの・・・」
そう言ったのは、このブルースカイ島に住む、女性住人だった。
彼女の名前はマリエ。 年齢は20代前半ぐらいの若者だ。
見知らぬ場所で、マリエは自分を呼ぶ声がしたような気がした。
「おい・・・」
聞き覚えのない男性の声だ。
「・・・呼んでる・・・? 私を・・・?」と、マリエは辺りを見回した。
「ああ、反応してくれた! そうだよ、呼んでるんだよ、オレの事わかるか?」
「わかるも何も、どこにいるのよ、声しか聞こえないわ!」
「ここにいるんだよ・・・」
「ここってどこよ!」
マリエは、その声とともに目を覚ました。
「また、あの男性の夢を見たのね・・・」
時計を見ると4時少し過ぎを指していた。
「もう1度寝ようっと」
彼女はそうつぶやき、再度布団にもぐりこんだ。
「おはようございます、『島主』さん」
マリエが言った。
朝は『島主』が巡回に来る。
「お腹がすきました」
マリエをはじめ、ここの住人は、悩みを持つと、『島主』に言う習慣がある。
悩みというより、「お腹すいた」「お風呂に入りたい」「可愛い服欲しい」などの、どちらかというと欲求が多いのだが・・・
「肉料理が食べたいです」
マリエが言った。
たいていは『島主』は要求通りにしてくれる。 たまに「手元にないから」と、代わりになるものを渡される事もあるが。
肉料理が食べたいというマリエの言葉に対し、『島主』はプレートに乗ったハンバーグを差し出した。
熱々のプレートに乗ったハンバーグを、マリエは「いただきます」と言って、食べ始めた。
この島に住んでる者は、この島を出る事はない。
「いつかこの島を出たいです」
という者もいるのだが、実際に出る事はない。
もし、島を出るのなら----それは表向き『遠くの島へ引っ越す』という事なのである。
「おい・・・」
マリエを呼ぶ声がする。
----また、あの男の夢を見てるんだわ。
彼女はため息をつきながら、辺りを見回し、そしてこう言った。
「あなた誰? 姿を現しなさいよ」
「姿を現す前に・・・オレの事を思い出せないか---」
「あのさ、思い出せないか、って聞く以前の問題に、姿見せてくれないとわからないじゃないのよ!」
「・・・わかった」
マリエの前に、男性が姿を現した。 その男性はマリエと同様の、Miiという種族であった。
「マリエ・・・」
男性はそう言ったのだが、マリエにとっては見覚えのない男性であった。
「あなた誰? どうして私の名前知ってるの?」
「・・・思い出してくれないのか」
「思い出すも何も・・・」
----あ、あなたは知らないわ----
そう言おうとした瞬間---
「マリエーーー! 起きなさいよ! 噴水に募金に行くわよー!」
という声に起こされ、見知らぬ男性の夢は、今日の分(?)は終わったのだった。
「最近、不思議な夢を見るの」
マリエが言った。 今彼女がいるのは自分の部屋ではない。
「紐なしバンジージャンプとか?」
そう聞いたのは、同じマンションに住む男性だ。
マリエは、見知らぬ男性が『俺の事知らないか?』と言ってくる夢の話をしていた。
そして、「タカは見ないの?」と聞いた。
タカとは今一緒に部屋にいる男性の名前である。
「うーん見ないなあ。 っつーか、知らない男が『俺の事知らないか?』って聞いてきても知らんとしか返事だけして、すぐ忘れてしまうだろうから」
「その夢を見てるのは私だけみたいね」
「次は腹筋するぞ」
「OK」
彼らは今、2人で筋トレをしている。
わざわざ部屋で筋トレを?と思うかもしれないが、ブルースカイ島はスポーツジムなどの運動施設はないため、住人は部屋で運動をする事が多いのだ。
しばらく筋トレをしていた2人だが、やがてマリエは立ち上がり、「じゃあ私、部屋に戻るね」と言って部屋を出て行った。
しかし彼女はすぐに部屋に戻ってきた。
「どうしたの? ひとりじゃ寂しいとか?」
冗談混じりでタカが聞いた。
「いや・・・。 私の勘違いかもしれないけど・・・」
「・・・ん?」
「タカの部屋の隣って、以前から空き部屋だっけ?」
「え?」
このマンションは新規で入居する場合、部屋の場所を決められない。
新規入居者がいる場合、最上階以外の空きがある場合、部屋番号の少ない順に部屋が埋まるのだ。
タカは結構長く住んでいて、最上階に住んでるわけではない。 同様にマリエも同じぐらい長く住んでいて最上階に住んではいない。
つまり隣が空き部屋という事は、少なくともそこの住人は、最近この島を出たという事になるのだが・・・
タカの隣の部屋の入り口ドアには、頑丈な鍵がかけられている。
外の、部屋の窓がみえる側から見ると、窓ガラスの上からクロス状に板が打ち付けてある。
これは誰も住んでいないという目印でもある。
「いや・・・。なんだろう・・・。隣に住んでる人いたのかな」
首をひねるタカ。そして同様にマリエも首をひねる。
「・・・だよね。 私も憶えがないわ」
別にこのマンションは、人との繋がりがないというわけではない。 もちろん、住人同士で仲がいい、悪い、というのはあるが。
その日の深夜。
「・・・マリエ」
また夢の中にあの男が現れたのだ。
「またあなたなのね」
「・・・」
「あなた、いったい何なの?」
「・・・覚えてないんだな。 いや、覚えてないんじゃなく・・・記憶を消されたな」
「ええっ!?」
「オレはタカの隣の部屋に住んでたんだよ」
「あの空き部屋に!?」
「オレが住んでいた事自体も、お前はもちろん、隣に住んでたタカでさえも、この住人の記憶から消されたんだ」
「記憶を・・・消された・・・?」
思わぬ事を言われ呆然としたマリエだったが、直後にこう言い返した。
「それにしても、お前呼ばわりされる筋合いはないわ! 何なのあなた!」
「ああ、記憶を消された状態なら、オレはお前呼びする立場じゃないな。すまん」
「・・・?・・・以前は私とは、お前呼びするような仲だったの・・・?」
「・・・マリエ・・・。 綺麗だったよ。白い・・・」
「白い?」
何か聞き出せるかも、と、マリエは思った。
しかし、またもや邪魔が入ってしまった。
「マリエー! 噴水に募金に行こうよー!!」
・・・ああもう!! 何か聞き出せるかもしれなかったのに!
寝癖でボサボサになってる髪を両手でクシャクシャしながらマリエはくやしがった。