「おはようございます、『島主』さん」
マリエが挨拶をした。
今は、朝の『島主』の巡回時間であった。
「甘い物が食べたいです」
マリエのその言葉に、『島主』は、チョコレートパフェを差し出した。
「いただきます」
マリエはそう言って、チョコレートパフェを食べ始めた。
「・・・そうだったのか。 マリエが、まさかその男の妻だったとはね」
「私も驚いたわ」
場所はタカの部屋。 マリエは昨夜の男の話をしている。
「でも、本当にその記憶はないのよ」
マリエが言ったが、同様にタカも、
「俺も、隣に住んでた人の記憶ないなあ」
と言ったのだった。
「でも私は、今はタカ一筋よ」
マリエがそう言うと、タカも同様に、
「俺もだよ」
と返した。
もうすっかり、2人の世界に入ってるのである。
漫画チックに空中にハートマークを飛び散らした状態の2人だった。
ピンポーン♪
インターフォンの音がした。 『島主』の訪問だ。
驚いて慌てて立ち上がる2人。 そして何事もなかったように振る舞い、マリエは自分の部屋に戻っていった。
ここでは部屋に2人でいるときに『島主』が訪問してきたら、部屋にいる訪問者は退場しなければいけない決まりとなっていた。
「『島主』さん、こんにちはー」
タカが訪問してきた『島主』に挨拶をした。
しかし『島主』は、タカの話を少し聞いただけで何もせず、そのまま去って行った。
「何だろう・・・。 単に住人の様子を見に来ただけなのかな・・・」
タカがつぶやいた。
翌日。
マリエの部屋にタカが来ていた。
他愛もない事を話していた2人だったが、彼らは2人でいるだけで幸せな気分であった。
ピンポーン♪
「『島主』さんが来たわ。 どうしたのかしら」
「じゃ俺、部屋に戻るね」
『島主』が訪問してきたら、部屋に訪問している人は退場する、という規定通り、タカは自分の部屋に戻っていった。
「『島主』さん、こんにちは」
マリエが『島主』に挨拶をした。
しかし『島主』は、少しマリエに話しかけただけで、部屋を去って行った。
「何だろう・・・。 様子を見に来たのかな・・・」
しかし、その翌日も、さらにその翌日も、マリエとタカが部屋に一緒にいるときは、必ず『島主』が訪問してきたのだった。
部屋で2人で一緒にお話をしたり、音楽聞いたり、Wiiで遊んだりしてる時に、必ず『島主』訪問のインターフォンが鳴るのだ。
最初は偶然だと思っていたのだったが・・・
ピンポーン♪
今日もマリエとタカがいる部屋に、『島主』が訪問してきた。
『島主』が訪問したら部屋の訪問者は退出する規定に従い、マリエは戻っていった。
「・・・まさか、『島主』さんは、私たちの交際を快く思ってないとか・・・」
・・・まさか・・・ねえ。
そんな事を考えて1人でいるマリエの部屋に、『島主』が訪問してきた。
「あ・・・『島主』さん」
『島主』は、マリエの顔をじっと見ていた。 しばらくしてマリエは、「そんなに まじまじ見なくても・・・」と言って照れはじめた。
やがて照れて赤い顔のまま、マリエは『島主』に質問をした。
「私とタカの事を、どう思いますか?」
---ストレートすぎる質問であったが、2人でいるときに毎回訪問されているという事もあり、どう思っているのか聞いてみたいのだ。
しかし『島主』の返事はこうだった。
「合わないかも・・・」
・・・はあ・・・
ため息をつき、マリエは部屋を出た。
気分転換に散歩でもしようと思ったのだ。
廊下で偶然タカと会った。
「タカも一緒に散歩行く?」
しかしタカの返事は「今から屋上に行くんだ」だった。
「屋上?」
「うん。 ちょっと『島主』が屋上に来てって」
「!」
マリエは直感した。
「待って! それって、他の女性住人からの告白で呼び出されてるんじゃ・・・」
しかし、タカの返事は「わかってるよ。 でも、行っておいた方がいいと思ってね」だった。
告白で呼び出されたとわかってても、行かない者もいたりする。
「タカったら、優しいんだか何なんだか・・・」
「俺はマリエ一筋だからね」と、タカはマリエの肩を引き寄せ、髪にキスをした。
赤面しつつもマリエは屋上に向かうタカを見送った。
「それにしても・・・」
マリエがつぶやいた。
「タカに想いを寄せてる住人がいて告白したいと言ったとしても、『島主』さんは、どうして相手がいるからと反対しなかったのかしら・・・」
しばらくして、屋上のドアから女性住人が、泣き顔で降りてきた。
時間を置いてから、タカが降りてきた。
翌日。
他の住人からこんな話があった。
昨日タカに告白した女性住人を、今日は見かけないね、と。
マリエはドキッとしたが、
「ああ、その女性住人なら旅行に行ってるよ。 『島主』が旅行券を渡して傷心旅行に行ってきなさいって言ったんだって」
という話を聞き、ちょっとほっとしたのだった。
「旅行先はどこ?」
「京都だってさ」