「いよいよ明日か・・・」
「別に今更どうこう言っても仕方がないわ」
ブルースカイ島のマンションの1室の男女2人が、“その時”を待っていた。
“その時”とは----
『島主』が、島を新しく作り直すという事だった。
島を新しく作り直すという事は、住人全員も消えてしまうという事である。
最初は住人同士の単なる噂話や憶測と、住人みんなは思っていた。
また、住人は『島主』とゆっくり話す機会がないため、はっきりした話が得られず、ただ不安が増すばかりであった。
そんな中、住人たちが取った行動とは、101号室の住人に話を聞きに行く事だった。
101号室の住人とは、『島主』の分身として、『島主』本人が最初に作ったMii(住人)なのである。
住人達は101号室の住人を問い詰める気はない。
あくまで『島主』の分身としてこの島に住んでいる者なので、外見はそっくりに作ってはいるものの、
意思や考え方は全く違う、2人は似て非なる者、という事は知っているのである。
当然の事ながら、101号室の住人からは、何も聞けず----
島を新しく作り直す事が決定した以上、住人側は、どうする事もできない。
“その時”が来るまで、普段通り過ごす事にしていた。
翌日。
島を作り直す、つまり島が消える日がやってきた。
いつもと同じく噴水に募金に行く住人達。
そして募金が終わるとその場所は、朝市の会場となる。
「安いよ!ブルースカイ島初上陸だよ!」
通りすがりの人に、新鮮な食料品の購入を勧めたりする。
---これ、意味あるの?だってこの島の存在は今日まででしょ?
・・・なんて事は言えなかった。
「今夜もストリートライブに行くよ」
「私は明日は朝市に行くから今夜は早く寝なくちゃ」
あくまで日常的な感じで過ごしていた。
マンションの、とある一室。
そこに1組のカップルがいた。
2人は若くなく、また、一回りも年齢差がある。
女性側が年下で、2人とも眼鏡をかけている。
「いよいよ今日だな」
男性が言った。
「ここで住んでる以上は、いつか来る日だったのよ」
やや冷めた感じで女性が言った。
「マキはいつもと変わらないな」
男性が言った。
マキとは女性の名前である。
「セイジだってそうじゃない?」
マキが言った。
同様にセイジとは男性の名前である。
今日がブルースカイ島最終日。
住人は全員、いつもと同じ状態で過ごしていた。
泣いても笑っても、自分が存在するのは今日までなのである。
もちろん逃げ場はない。
「一緒にDSで遊ばない?」
「筋トレしようよ」
「音楽聞こうよ」
普段の会話が住人同士で繰り広げられる。
さらに、今のうちに思いを寄せている住人に告白しようと『島主』に相談する住人もいる。
今日に限り、『島主』は別の異性と一緒にしたい住人でも、告白のバックアップはしていた。
そしてマンションの1室のセイジの部屋。
一緒にマキもいる。
彼らは悟ったかのごとく、何もせず、2人で過ごしていた。
「食事にしようか。何食べたい?」
マキが言った。
時間は正午。お昼ご飯時である。
「焼きそばがいいな」
「了解」
マキはそう言うと、エプロンをしてキッチンに向かった。
慣れた手つきで具を次々と切っていき、フライパンで炒め始める。
「料理ができる人って憧れるわねえ」なんて言いながら。
「僕も料理が出来る人は憧れるよ」
セイジが言った。
「いつ背後に来たの!?てっきり座って待ってるかと」
別に足音立てずに来たわけじゃない。単に炒める音で気付かなかっただけだ。
2人で焼きそばを食べている時だった。
『ーーーー!!』
『-----!?・・・!』
『ーーー!!ーー!!』
何やら言い争う声がする。隣室の住人がケンカしているようだ。
それと同時に、物を投げ合う音も聞こえてくる。
「隣の部屋か。最後の日ぐらいケンカするなよ・・・」
ぼそっとセイジが言った。
「・・・最後の日だから、本音が出たのかもね」
同様にぼそっとマキが言った。
「あー、その可能性もありそうだな」
バタン、バタン!と、激しくドアを開閉する音が聞こえてきた。
「相手が部屋を出たみたいね」
「ケンカした隣の住人は、どうする気だろ」
「気になる?」
「・・・少なくとも今はね」